基本的には融資を受けることとなりますが、融資元はどこを選べばよいのでしょうか。
本記事では、クリニックの開業資金を調達できる融資元の種類や、融資を受ける流れなどを解説します。
開業を目指して情報を集められている方の参考となれば幸いです。
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クリニック開業資金の主な融資元
クリニックの開業にあたり、融資を受けるには、主に以下の融資元が選択肢として挙げられます。
クリニック開業資金の調達方法
| 金利の傾向 | 審査スピード | 利用条件 | |
| 日本政策金融公庫 | 比較的低い | 2~3週間程度 | 特になし
(女性・35歳未満・55歳以上は金利優遇を受けられる) |
| 民間の金融機関 | 信用金庫や地方銀行であれば低い | 1~2週間程度 | 特になし |
| 医師会・地方自治体 | 地方による | 地方による | 医師会の場合:医師会に入っている必要がある |
| 独立行政法人福祉医療機構 | 条件による | 3か月程度 | 無床のクリニックの場合は、クリニックが不足している地域での開業のみ対象 |
| リース会社 | やや高い | 比較的速い | そのリース会社を通じて医療設備をリースする必要がある |
ここからは、上記それぞれの融資元について、さらに詳しい情報をお伝えします。
日本政策金融公庫
開業資金の融資元としては、まず日本政策金融公庫が挙げられます。
日本政策金融公庫は政府系の金融機関であり、創業や中小企業の経営を支援しています。
提供サービスのなかでクリニックの新規開業で使えるのは、個人事業主を対象としている“国民生活事業”のうちの“新規開業資金”の融資です。
設備資金7,200万円(うち運転資金4,800万円)が融資上限となっており、返済は20年以内、運転資金の場合は7年以内となっています。
融資から2年のあいだは“据え置き期間”として、元金を返済せずに利息だけを払うこともできるため、開業医の心強い味方となってくれるでしょう。
なお、金利は担保や保証人の有無によって異なります。
女性または35歳未満、あるいは55歳以上の方が開業する場合は金利優遇を受けられる点もうれしいポイントです。
ただし、以下で紹介する民間の金融機関と比較すると、審査期間は2~3週間と、やや時間を要する点にはご留意ください。
民間の金融機関
民間の金融機関、つまり銀行でも融資を受けられます。
大手銀行(メガバンク)よりも、クリニックを開業する予定の地域にある信用金庫や地方銀行を選ぶとよいでしょう。
基本的には、大手銀行よりも信用金庫や地方銀行のほうが金利は低く、新規開業であっても審査に通りやすいためです。
地域密着型のクリニックを目指している場合は特に、地域の金融機関と良好な関係を築くことも大切なので、そういった側面でも有効な選択肢として挙げられます。
さらに、信用金庫や地方銀行によっては、行政や中小企業支援機関と連携して、経営のサポートやスタッフの研修などのサービスを提供している場合もあります。
融資だけでなく、このようなサービスも包括的に受けたい場合には、民間の金融機関から融資を受けるのがおすすめです。
また審査期間は1~2週間と、日本政策金融公庫よりも短い点も大きなメリットです。
医師会・地方自治体
各都道府県にある多くの医師会では、クリニックの開業支援ローンが提供されています。
設備資金や運転資金だけでなく、医師会の入会費用も借り入れられるため、医師会に入るのであれば融資元として検討してもよいでしょう。
また、地方自治体では中小企業を対象に、金利や信用保証料を優遇した“制度融資”とよばれるものを提供しているため、こちらを利用するという選択肢もあります。
制度融資とは、あらかじめ“信用保証料”を支払っておくことで、将来的に万が一融資を返済できなくなった場合も、補償を受けられる制度です。
自治体と連携している金融機関を通じて申し込めば、この制度融資の審査を受けられます。
医師会と地方自治体、いずれの場合であっても条件はそれぞれ異なりますので、興味のある場合はまず、開業地にある医師信用組合で相談しましょう。
独立行政法人福祉医療機構(WAM)
医療機関に向けて、資金の貸付を行っている厚生労働省管轄の機関である“独立行政法人福祉医療機構(WAM)”からも、開業資金の融資を受けられます。
具体的には、医療機器や備品の購入費などを支援してもらえます。
融資対象や資金の種類によって借入上限額や融資期間が異なるため、気になる場合は事前によく確認しておきましょう。
なお、入院のための設備がない、つまり無床のクリニックを開業する場合の資金に関しては、WAMでは一定の条件が設けられています。
クリニック不足の地域に該当するエリアでの開業でしか融資の対象となっていないため、WAMから融資を受けたい場合は、まずは該当エリアを確認する必要があります。
また、審査期間は3か月程度と、ほかの融資元と比較すると長い点にもご留意ください。
リース会社
医療機器をリースする場合は、リース会社が提供している開業支援ローンを使って融資を受けることも可能です。
なお、融資条件や借入上限額はリース会社によって異なりますが、基本的には金利が高めに設定されています。
これは、リース会社が窓口となって銀行を仲介することになるためです。
ただしその分、審査のスピードが速いという点はメリットであるため、金利とスピード感、どちらを優先したいのか? を考えて検討することをおすすめします。
クリニックの開業で融資を受ける際の流れ
上記でさまざまな融資元を紹介しましたが、いずれを選ぶ場合でも、融資を受ける際の流れは概ね一緒です。
ここでは、申し込みから融資決定までの一般的な流れを紹介します。
クリニックの開業で融資を受ける際の流れ
- 融資条件の確認
- 必要書類の準備
- 融資担当者との面談
- 融資審査
- 融資決定
①融資条件の確認
まずは各金融機関の提示している条件を確認しましょう。
具体的には、以下の条件を見ておくと、比較・検討に役立ちます。
確認すべき融資条件
- 上限額
- 金利
- 担保・保証人の有無
- 返済期間
各金融機関を上記の条件で比較したうえで、ご自身の状況にもっとも合う融資元を絞り込めたら、申し込みに進みます。
②必要書類の準備
申し込み先の金融機関が決まったら、必要書類を準備し、提出します。
基本的には、以下の書類が必要となります。
融資の申し込みに必要な書類
- 本人確認書類(免許書・印鑑証明書・医師免許のコピーなど)
- 事業計画書
- 経歴書
- 設備投資の見積書
- 過去3年分の確定申告書
- 資産状況の証明となる資料(通帳や住宅ローンの残高など)
上記のなかでも特に重要なのが、事業計画書です。
「このクリニックになら、融資してもきちんと返済してもらえそうだ」という信頼を勝ち取るために、開業後の収益見込みや必要経費、診療方針を具体的に記載しましょう。
また、過去にローンの滞納歴があると融資の審査に落ちてしまう可能性があるため、本格的に審査を受ける前に信用情報を確認しておくことをおすすめします。
③融資担当者との面談
必要書類を提出したら、金融機関の融資担当者との面談を行います。
面談の目的は、金融機関側が「この事業者は、貸したお金をきちんと返済してくれるか」を判断することです。
そのため、事業計画書の内容に基づいたうえで、資金の使い道や経営のビジョンなどをしっかりと伝える必要があります。
資金計画や収支予測などについて融資担当者から質問を投げかけられることもあるため、具体的な根拠を踏まえて回答できるようにあらかじめ準備しておくことが大切です。
④融資審査
事業計画書と面談の内容をもとに、金融機関側で審査が行われます。
審査に要する具体的な期間は金融機関によって異なりますが、一般的には2週間~1か月程度です。
なお、状況によっては審査中に追加資料を求められることもあります。
ここでレスポンスが滞ると審査のスピードに影響するため、迅速な対応を心がけましょう。
⑤融資決定
審査を終えたら、融資担当者から連絡が来ます。
ここで審査通過となれば、無事に融資を受けられます。
借入契約書が届いたら、迅速に必要事項を記入して返送しましょう。
目安としては、返送した借入契約書が金融機関に到着して3営業日程度で指定の口座に入金されます。
なお、クリニックの開業において、融資決定はゴールではない旨をきちんと理解することが大切です。
返済が滞らないように、計画的に資金を管理しましょう。
また、経営状況について金融機関に定期的に報告しておくと、今後追加融資を受けたい状況になった場合に有利にはたらく可能性があります。
クリニックの開業で融資を受ける際の金利
クリニックの開業資金のために融資を受ける場合は、金利が発生します。
融資の金利には“固定金利”と“変動金利”の2種類があり、それぞれメリット・デメリットが異なるため、ここで確認しておきましょう。
固定金利
名称の通り、金利が固定されることで、景気による影響を受けないのが固定金利です。
一度決まったら金利が変わらないため、返済の計画を立てやすいというメリットがあります。
ただし、一般的には後述する変動金利よりも高い金利が設定される点はデメリットといえます。
変動金利
変動金利では、固定金利と異なり、そのときの景気によって金利が変化します。
基本的には固定金利よりもリーズナブルかつ、繰り上げ返済が可能である点など、メリットが多い点が特徴です。
ただし、景気変動の影響を受けて、金利が高くなる可能性もある点は意識しておく必要があります。
クリニック開業資金の融資を受ける際のポイント
開業資金の融資を受けるためには、審査に通過しなければなりません。
そこで、以下では審査を受けるにあたって大切な3つのポイントを紹介します。
クリニック開業資金の融資を受ける際のポイント
- ポイント①クリニックのコンセプトを明確にする
- ポイント②具体的な事業計画を立てる
- ポイント③ある程度の自己資金を準備する
ポイント①クリニックのコンセプトを明確にする
実は、開業資金の融資において「どのようなクリニックにしたいのか」というコンセプトは非常に重要です。
「なぜ、このクリニックを開業したいのか」「このクリニックの強みは何か」が明確でなければ、融資の面談で診療方針や経営理念をきちんと伝えられません。
また、コンセプトを明確にすることは、融資の審査だけでなく、ご自身の事業計画にも役立ちます。
具体的なビジョンを描くことで、開業に必要な医療機器やスタッフの人数、内装などもイメージできるようになり、費用の全体像も掴めるようになるためです。
ポイント②具体的な事業計画を立てる
ポイント①と関連する内容となりますが、事業計画をしっかりと立てることも融資を受けるために非常に重要です。
診療方針のほか、その地域の医療ニーズや患者さんの数・収益の予測、集患の戦略などを整理して事業計画書にまとめることで、クリニックの目指している未来が伝わります。
根拠に基づいた事業計画によってクリニックの将来性がある旨がわかれば、融資担当者も「このクリニックになら融資を出しても大丈夫そうだ」と判断してくれるでしょう。
そのためにも、市場調査と競合分析を綿密に行いたいところです。
また、患者さんの数や収益に関しては楽観的に考えすぎず、ある程度シビアに捉えると、地に足のついた事業計画を立てられます。
ポイント③ある程度の自己資金を準備する
融資に頼りきりになるのではなく、自己資金も必ず準備しましょう。
医師は一般的に、年収や社会的なニーズが高い職業であることから、一定の信用力があります。
しかし、だからといって自己資金がまったくない状態でどのような融資も受けられるわけではありません。
なかには自己資金なしで借りられる融資もありますが、その場合は希望通りの金額を借りられないことや、金利を高く設定されることがあります。
そのため、基本的には医師であってもほかの職業の事業者と同様に、ある程度の自己資金を準備してから開業融資に申し込むこととなります。
自己資金の目安は、開業資金の1~2割程度です。
たとえば、開業資金として7,000万円が必要になる場合、700万~1,400万円は自己資金で用意するのが理想的だということです。
融資以外でクリニックの開業資金を調達する方法
クリニックの開業資金の調達方法は、融資だけではありません。
以下の方法も組み合わせて、無理のない計画を立てましょう。
融資以外の資金調達方法
- 自己資金を使う
- 親族から援助を受ける
- 補助金や助成金を利用する
①自己資金を使う
一般的に、自己資金は多ければ多いほど良いでしょう。
勤務医時代の預金や退職金を充てて自己資金とすることをおすすめします。
ただし、無借金での開業にこだわりすぎるのはおすすめしません。
経営を成功させるには、ある程度の投資も必要であるためです。
無理に自己資金だけでまかなおうとするのではなく、融資をはじめとするほかの資金調達方法も併用しつつ、自己資金の割合を多くできると理想的です。
②親族から援助を受ける
親族から、贈与あるいは借入で資金提供を受けるという方法もあります。
この方法は、単に「資金を調達できる」というだけでなく、後に融資を受ける場合にメリットとなり得ます。
なぜなら、融資の評価の上では親族から援助してもらった額は実質的に“自己資金”と見なされることがあるためです。
自己資金額が多いほど「返済能力がある」と判断されて、希望通りの条件で融資を受けられる可能性が高くなるのです。
なお、親族から開業資金を借りる場合には、契約書を作成したうえで毎月適正な利息を乗せて、銀行振り込みなど記録が残る方法で返済することをおすすめします。
一時的な借入である旨をきちんと証明できなければ、実質的に「贈与だ」と判断されて、別途贈与税が発生してしまう可能性もあります。
③補助金や助成金を利用する
政府や多くの地方自治体では、新規開業などを行う事業者を支援する目的で、補助金や助成金の制度を設けています。
いずれの制度も基本的に返済不要なので、積極的に活用したいところです。
たとえば、以下の制度があります。
開業資金の調達に使える補助金・助成金制度の例
- 東京都中小企業振興公社:創業助成金
- 中小企業庁:IT導入補助金
- 厚生労働省:医療施設等施設設備費補助金
なお、補助金・助成金の制度によっては、融資と同様に審査があるため、必ず受給できるとは限らない点にご注意ください。
クリニックの開業資金を抑える方法
最後に、クリニックの開業にかかる費用をできるだけ抑えるために意識したいポイントを紹介します。
クリニックの開業資金を抑えるポイント
- 立地と費用のバランスを考えて物件を選ぶ
- 内装の設計・施工をワンストップで行う業者を選ぶか、居抜き物件を利用する
- 高額な医療機器は中古やリースで導入する
- 電子カルテやレセコンはクラウド製品を選ぶ
- 経営が安定したら設備を徐々に揃えていく
- ターゲットに合ったチャネルで集患する
- 税理士や医療コンサルタントにアドバイスをもらう
特に、物件選びは重要です。
都市部の物件は集患の面で条件が良い一方で、取得費が高額になります。
反対に、取得費が安い物件は集患があまり見込めない可能性があるため、立地と費用のバランスを考える必要があるのです。
なお、もし物件選びにお悩みであれば、クリニックモールという選択肢があります。
クリニックモールは、複数の医療機関が一つの建物に集まっている医療施設です。
トイレや駐車場が共用となっているため初期費用を抑えられるという点が大きなメリットとして挙げられます。
クリニックモールでの開業をお考えなら、医療コンサルタントへのご相談がおすすめです。
条件に合う物件を紹介してもらえるほか、経営や集患のアドバイスなども受けられます。
クリニックの開業資金の融資元は大きく分けて5種類ある
以上、クリニックの開業資金を調達するための融資について解説しました。
主な融資元は、日本政策金融公庫をはじめ5種類あります。
本記事でお伝えした情報を参考に、ご自身に合う方法で資金を調達してください。
なお、可能な限り開業資金を抑えるには、物件選びや内装工事、設備導入の際に押さえておきたいポイントがあります。
特に、物件の取得費用を抑えたい方には、クリニックモールがおすすめです。
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新規開業を考えている事業者様は、ぜひお気軽にご相談ください。
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