高齢化の進行により、訪問診療のニーズは年々高まっています。
とはいえ、訪問診療を開業するとなると、「どの程度の年収が見込めるのか」「何から始めればいいのかわからない」と不安を感じる医師も多いのではないでしょうか。
本記事では、訪問診療医の年収の目安や、クリニックを開業するまでの具体的なステップ、必要な開業資金を詳しく解説します。
資金調達の具体的な方法にも言及していますので、ぜひ参考にしてください。
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訪問診療医の平均年収は?
さっそく、訪問診療医として開業した際の年収の目安から確認していきましょう。
厚生労働省が実施した「第25回医療経済実態調査」によると、2024年時点で在宅療養支援診療所の平均損益は、年間約2,900万円でした。
ただし開業医は、上記の損益額から税金や社会保険料、設備の維持費、さらに広告宣伝費などを自己負担する必要があります。
これらを“必要経費”とみなすと、年収は損益額の半分程度になると考えられます。
訪問診療を開業するために行うこと
訪問診療クリニックを開業するには、事前に決めておくべき事項や必要な準備が数多くあります。
ここでは、開業までのステップを順に紹介します。
訪問診療クリニックを開業するまでのステップ
- ステップ①クリニックの診療方針を決める
- ステップ②クリニックの事業計画を立てる
- ステップ③資金の調達方法を検討する
- ステップ④開業地を選定する
- ステップ⑤物件の種類を決める
- ステップ⑥施工業者を選定して内装工事を依頼する
- ステップ⑦訪問診療で必要な医療機器や車両を準備する
- ステップ⑧保健所や厚生局で手続きを行う
- ステップ⑨スタッフの採用活動を行う
- ステップ⑩集患のための広報活動を行う
ステップ①クリニックの診療方針を決める
訪問診療クリニックを開業する際は、診療方針を明確にしましょう。
まずは、訪問診療のみを行うのか、あるいは訪問診療と外来診療の両方を行うのかの選択です。
クリニックを開業する地域の需要や、ご自身が目指す診療スタイルから、最適と思われる診療方針を定めることが重要です。
ただし、訪問診療に特化したクリニックを開業する際には、厚生労働省が定める要件を満たす必要があります。
訪問診療クリニックの開業要件の詳細は後述します。
ステップ②クリニックの事業計画を立てる
訪問診療クリニックの開業に際しては、融資を受ける際に必要になるため、綿密な事業計画を策定することが大切です。
最初に、ご自身の診療に対する理念や目標を定め、「どのような医療を提供したいか」「患者さんにどのように貢献したいか」を整理しましょう。
これにより、訪問診療クリニックの経営の軸が固まります。
次に、対象とする患者層を具体的に設定してください。
高齢者や難病、末期がんの患者さんなど、年齢・疾患・居住地域などを具体的に設定しておくと、集患戦略を立てる際の目安となります。
また、事業計画を立てるうえでは、収支計画も非常に重要です。
初期費用や運転資金、収入見込みを計算し、融資などの資金調達の方法を整理しておくことで、計画的な運営に向けた基盤が整います。
ステップ③資金の調達方法を検討する
事業計画の一環として収支計画を立てる際、資金調達の方法についても綿密に検討する必要があります。
クリニックの開業では多額の初期費用が発生するため、自己資金のみで賄う計画は現実的ではありません。
自己資金だけでは不足が見込まれる場合は、金融機関からの融資のほか、国や自治体の補助金・助成金制度を利用しましょう。
以下では、訪問診療クリニックを開業する際に利用できる資金調達の方法を解説します。
金融機関からの融資
開業資金の調達にあたっては、メガバンクや地方銀行、信用金庫が取り扱う事業向け融資を利用するのがおすすめです。
ただし、金融機関ごとに金利や返済条件が異なるため、ご自身の開業計画に合った融資かどうかをしっかりと比較・検討しましょう。
審査では、事業計画の実現性や経営者の能力、自己資金の割合、収支見込みなどが重視されます。
日本政策金融機構
日本政策金融公庫は、国が100%出資する政府系の金融機関です。
開業医も利用できる“新規開業・スタートアップ支援資金”という融資制度があり、開業資金の調達先として広く利用されています。
新規事業の立ち上げを支援するため、低金利かつ長期返済が可能な融資条件が設定されているのが特徴です。
国や自治体からの補助金・助成金
国や地方自治体では、新規開業や特定事業を支援する多くの補助金・助成金制度が用意されています。
たとえば、国の財政支援制度である“地域医療介護総合確保基金”や、医療・介護の連携を目的とした自治体独自の支援事業などが挙げられます。
こうした返済不要の制度を利用すれば、開業時の資金負担を大幅に抑えられる可能性があるため、開業地で利用できる制度があるかどうかを調べ、積極的に申請しましょう。
ステップ④開業地を選定する
収支計画の策定や資金調達方法の検討とあわせて、訪問診療クリニックの開業地の選定も進めていきます。
開業場所を選ぶ際には、診療圏調査を実施しましょう。
診療圏調査とは、対象エリアの推定患者数のほか、人口や高齢化率、交通アクセスなどを確認するものです。
調査によって得た情報をもとに、訪問診療の需要が見込めるエリアを選ぶことが、安定経営に向けた第一歩となるはずです。
ステップ⑤物件の種類を決める
開業地を選んだあとは、物件選びに移ります。
訪問診療クリニックを開業する際は、以下の物件タイプから選ぶのが一般的です。
訪問診療クリニックを開業する際に選べる物件タイプの例
- 医療モール
- 戸建て物件
- 居抜き物件
- 継承物件
上記のうち、初期費用をできる限り抑えたい場合には医療モールが適しています。
戸建て物件では土地や建物 の購入が必要ですが、医療モールであればテナント料のみで開業することが可能です。
もともと医療機関が入ることを前提に設計された物件であり、駐車場やトイレなど必要な設備が整備されているため、設備投資を抑えられます。
ステップ⑥施工業者を選定して内装工事を依頼する
開業場所と物件が確定したら、次は内装の整備に取りかかります。
訪問診療のみを行う場合は、患者さんが来院しないことを前提としていることから、一般的なクリニックのような広いスペースは必要ありません。
事務作業やカルテ管理が行えるスペースさえ確保されていれば問題ないため、内装工事の際には、スタッフの快適性と効率性を最優先したい旨を相談するとよいでしょう。
ステップ⑦訪問診療で必要な医療機器や車両を準備する
クリニックの開業にあたっては、医療機器の選定と発注も早めに着手しておきたいところです。
医療機器の場合、発注から納期までに数か月かかることも珍しくありません。
これは、厳格な規制要件を満たす必要があることや、部品や資材の供給網が複雑なこと、さらに少量受注生産で作られることが主な理由です。
訪問診療で必要な医療機器は、開業予定日の2~4か月前には納品してもらえるよう手配しておくことが大切です。
また、訪問診療では移動手段として車両を使用します。
走行性能や積載量、燃費などを考慮して、開業するクリニックの訪問診療に最適な車両を選びましょう。
車両に関しても、車種やメーカーの在庫状況によって納期が後ろ倒しになる可能性があるため、できる限り早めに発注することをおすすめします。
ステップ⑧保健所や厚生局で手続きを行う
訪問診療クリニックに限りませんが、医療クリニックの開業には法的手続きが必須です。
まず、医療機関開設の許可を得るために、保健所へ申請を行います。
くわえて、厚生局にも保険医療機関指定申請や労災保険指定申請、生活保護法指定医療機関申請など、いくつかの届出を行う必要があります。
こうした手続きは煩雑であるため、クリニック開業サポートを活用して助言を受けるか、あるいは税理士や行政書士などの専門家に相談するとよいでしょう。
ステップ⑨スタッフの採用活動を行う
クリニック開業に必要な一連の手続きが済んだら、いよいよスタッフの採用活動を始めます。
質の高い医療を提供するためには、ご自身の医療方針に共感し、適切にサポートしてくれるスタッフが不可欠です。
看護師や医療事務、ドライバーなど、必要な職種や人数を割り出したうえで、業務内容や勤務条件を整理してから募集を開始しましょう。
また、訪問診療クリニックでは訪問スケジュールを調整する業務が発生します。
その際、患者さんやご家族との連絡が欠かせないため、実務経験にくわえて、コミュニケーション能力が高い人材が望ましいといえるでしょう。
ステップ⑩集患のための広報活動を行う
開業準備の最終段階では、集患のための広報活動も開始しましょう。
開業する地域の特性や住民の年齢層、家族構成などを意識したホームページやWeb広告などを制作します。
近年は、患者さんやご家族の多くがインターネットで情報を得ているため、自院の強みがわかりやすく整理されたホームページをつくって積極的に訴求することが大切です。
さらに開業後は、SNSを通じて、日々の診療や地域医療への取り組みなどを発信しつづけることで、患者さんや地域住民からの認知度の向上と信頼の獲得につながります。
訪問診療を行うクリニックの開設要件
訪問診療クリニックを開業するのに必要な保険医療機関の指定を受けるには、厚生労働省が定める以下の要件をすべて満たしている必要があります。
訪問診療クリニックで保険医療機関の指定を受けるための開設要件
- 無床クリニックであること
- 在宅医療を行う地域を明確にし、その範囲(市区町村や住所など)を患者さんにわかるように伝えること
- 該当地域の患者さんから訪問診療や往診を求められた場合、医学的に正当な理由なく断らないこと
- 外来診療が必要な患者さんが訪れた際に対応できるよう、同じ地域内で協力してくれる医療機関を2か所以上確保しておくこと(ただし、地域の医師会(歯科の場合は歯科医師会)から協力の同意を得ている場合はこの限りではない)
- 該当地域で在宅医療を行い、患者さんからの利用に関する相談に随時対応するとともに、自院の連絡先などを広く周知すること
- クリニックの名称や診療科を外から確認できるように掲示し、通常診療時間中は患者さんや家族の相談に応じられる体制(設備や人員)を整備していること
- 夜間・休日の緊急連絡体制が整っていること
もし、外来診療をほとんど行わず、在宅医療専門のクリニックとして開業するのであれば、以下の基準も満たすことが求められます。
在宅医療専門の訪問診療クリニックの施設基準
- 患者さんのうち在宅診療を受ける割合が95%以上であること
- 1年に5か所以上の医療機関から新規患者の紹介があること
- 看取り実績が年20件以上、または15歳未満の超・準超重症児の患者さんが10人以上であること
- 在総管・施設総管の件数に占める“施設総管”が70%以下であること
- 在総管・施設総管の件数に占める“要介護3以上の患者+重症患者”の割合が50%以上であること
在宅医療専門の訪問診療クリニックの場合は、これらの要件と基準を確認したうえで、開業計画を進めなくてはなりません。
参照元:厚生労働省「在宅医療のみを実施する医療機関に係る保険医療機関の指定の取扱いについて」
参照元:厚生労働省「地域包括ケアシステム推進のための取組の強化52p」
訪問診療の開業に必要な資金とは?
訪問診療クリニックの開業資金は、1,000万~2,000万円程度が相場 です。
主な費用の内訳は、以下をご確認ください。
訪問診療クリニックの開業資金の内訳の例
- 物件取得費
- 内装費
- 医療機器・車両購入費
- システム導入費
- 院内設備費(家具・家電・PCなど)
- 採用経費
- 広告宣伝費(ホームページ制作・各種広告費用など)
上記の物件取得費や内装費は、クリニックの規模や立地によって大きく変動します。
また車両を手配する際には、購入するより、リースやサブスクを利用することで初期費用を抑えられます。
人件費や広告宣伝費といった運転資金は多めに確保し、電子カルテやシステム導入に投資して業務効率化を図ることが成功の鍵です。
訪問診療クリニックを開業・運営する際のポイント
訪問診療クリニックの開設要件や必要な開業資金を確認したところで、ここからは、開業を成功に導くコツと開業後に意識したいポイントを紹介します。
訪問診療クリニックの開業前後で押さえておきたいポイント
- ポイント①クリニック開業サポートを活用する
- ポイント②ITで業務を効率化する
- ポイント③他院との差別化を図る
- ポイント④地域に密着した医療を提供する
- ポイント⑤医師のワークライフバランスを重視する
ポイント①クリニック開業サポートを活用する
「開業の手続きを一人で対応できるか不安……」「診療圏調査のやり方や資金計画の作成方法がわからない」とお悩みであれば、クリニック開業サポートの利用がおすすめです。
クリニック開業サポートを活用すれば、事業計画の策定から物件の選定、資金調達に至るまで、総合的な支援を受けることが可能です。
たとえば、『マツキヨココカラ』が提供するクリニック開業サポートでは、上記の支援にくわえて、広報活動や人材採用のサポートも実施しています。
煩雑な開業準備は経験豊富な専門家に任せて、ご自身は診療方針の決定やスタッフ教育など、医療サービスの質に直結する重要な業務に集中しましょう。
ポイント②ITで業務を効率化する
訪問診療クリニックでは、患者さん宅への往診や書類作成など、日々の業務が多岐にわたります。
こうした業務をスムーズに進めるためには、ITシステムの導入が不可欠です。
先ほども少し触れましたが、電子カルテやレセプトシステム、スケジュール管理システムを取り入れることで、情報入力や訪問スケジュールの管理を効率化できます。
その際、クラウド型のシステムを選べば、初期費用を抑えられるほか、どこからでもアクセス可能となり利便性も高まります。
ポイント③他院との差別化を図る
訪問診療クリニックの開業を成功させるためには、他院との違いを明確に打ち出すことも重要です。
他院と差別化できる自院だけの強みを考え、ホームページやSNSで発信しましょう。
たとえば、「24時間対応可能」「高度医療が必要な重度障害患者にも対応可能」といった、訪問診療の時間帯や対応領域に関する強みを具体的に示すことも一つの方法です。
重要なことは、地域の患者さんやその家族に「ここなら効果的な治療が受けられそうだ」と思ってもらえる文面を考え、アピールすることです。
ポイント④地域に密着した医療を提供する
訪問診療クリニックの開業後、運営を軌道に乗せるためには、地域の医療・介護ネットワークとの連携も欠かせない視点です。
地域の医療機関や介護施設のほか、ケアマネジャーや相談支援専門員とも密に情報を共有すれば、患者さんの病状や生活状況に応じた医療・介護サービスを提供できます。
また、厚生労働省が推進している“地域包括ケアシステム”の仕組みを理解し、自院が果たすべき役割を自覚すると、地域のなかで信頼される医療機関になれるでしょう。
ポイント⑤医師のワークライフバランスを重視する
訪問診療クリニックの開業後、安定した運営を続けていくためには、医師自身の働き方や私生活とのバランスも考慮する必要があります。
地域に必要とされる質の高い医療を提供するには、診療にあたる医師自身の健康状態が良好に保たれていることが大前提です。
訪問診療では、24時間365日、いつでも往診が可能な体制を整える必要があるため、医師一人に過度な負担が集中しないよう、勤務時間の適切な管理が求められます。
十分に休息できる時間を確保し、私生活も大切にしながら、健康的なワークライフバランスを維持しましょう。
訪問診療を開業するメリット
訪問診療クリニックを開業する一番のメリットは、高い将来性があり、収益モデルが安定している点です。
超高齢化社会の進展によって、在宅医療の需要は年々増加しています。
訪問診療では、1回あたりの診療報酬が外来診療よりも高く設定されており、少ない診療回数でも一定の収益が見込めるため、長期的に安定した経営が実現するでしょう。
収入の見通しが立てば、医師やスタッフは安心して医療に専念でき、患者さんに質の高い在宅医療を届けられるのも、訪問診療のほかにはないメリットといえます。
また、定期的に訪問する患者さんと深く向き合える点も、医師としてのやりがいに通じるのではないでしょうか。
訪問診療を開業するデメリット
訪問診療クリニックを開業するデメリットは、24時間365日連絡が取れる体制を整えなくてはならないことです。
日中の診療が終わったあとも、夜間や休日に急変の連絡が入る可能性もあります。
こうした対応に追われ、睡眠不足や疲労が蓄積していくと、診療の質にも影響を与えるかもしれません。
開業直後は医師に負担が集中しがちですが、シフト制の導入や連携スタッフの配置で適切な体制を整えれば、運営が軌道に乗る日も遠くないはずです。
訪問診療クリニックを開業する流れを把握して滞りなく準備を進めましょう
訪問診療クリニックを開業する際は、診療方針を決めたうえで事業計画を策定し、実現可能な収支計画を立てることが不可欠です。
さらに、開業地や物件の選定、医療機器や車両の手配など、開業前にはさまざまな準備が必要となります。
そのため、開業までのスケジュールを明確にし、必要に応じて専門家の助言も受けながら、計画的に準備を進めていくことが重要です。
訪問診療クリニックの開業にあたり、プロの知見を借りてスムーズに準備を進めたい医師の方は、マツキヨココカラの提供するクリニック開業サポートをご活用ください。
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