近年の医療業界では医療施設数や病床の有無、医師数などに、ある傾向がみられます。
今後、開業を目指す医師にとって、こうした最新の動向を知ることは重要です。
本記事では、日本国内における医療施設数の動向と開業医数の増加が予想される背景を解説します。
開業準備の一助となれば、幸いです。
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日本国内の医療施設数の動向
はじめに、日本国内の医療施設数の動向について確認していきましょう。
最新の施設数
ここでは、最新の医療施設数を整理していきます。
厚生労働省が公表した『医療施設動態調査』によると、2025年11月末時点における医療施設の総数は179,208施設でした。
同年10月末時点の総数は179,255施設で、前月から47施設が減少しています。
施設別の内訳は、以下をご覧ください。
| 施設別にみる施設数 | 施設数(施設) |
|---|---|
| 病院 | 7,988 |
| 一般診療所 | 105,683 |
| 歯科診療所 | 65,537 |
前月比で病院は10施設の減少、一般診療所は26施設の増加、そして歯科診療所は63施設の減少となりました。
病院と歯科診療所の数が減少し、一般診療所数が増加しているという結果は、今回だけにとどまらず、速報性の高い8~10月度のデータでも同様です。
参照元:厚生労働省「医療施設動態調査(令和7(2025)年11月末概数)p1」
病院数の推移
厚生労働省の調査によると、日本国内の病院数は1990年以降、減少を続けています。
1990年のピーク時には10,096の病院がありましたが、徐々に減少し、2025年11月末時点では7,988施設と、8,000施設を割り込むまでになりました。
減少率は、この35年で約20%となっています。
2024年までの直近3年間のデータでは、2022年の病院数は8,156施設、2023年は8,122施設、また2024年は8,060施設でした。
病院数が減りつづける原因には、医師の高齢化や医療従事者の不足、経営負担の増加などが指摘されています。
こうした複数の要因が重なり、施設数の減少につながっているのでしょう。
参照元:厚生労働省「医療施設動態調査(令和7(2025)年11月末概数)p1」
参照元:厚生労働省「令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況 p6」
参照元:厚生労働省「令和6(2024)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況 p5」
一般診療所数の推移
一方、一般診療所数は1988年以降、長期にわたって増加しており、2025年11月末時点で105,683施設となっています。
ただし、その内訳には変化がみられ、入院患者の受け入れが可能な“有床診療所”の数は年々減少し、外来診療のみを行う“無床診療所”の数が増えているのが現状です。
厚生労働省が公表したデータによると、2025年11月末時点での有床診療所数は5,131施設となっており、前年比で234施設の減少となりました。
対して無床診療所数は、前年と比べて552施設増えています。
詳しくは次章で解説しますので、そちらをご覧ください。
このように有床診療所数が減っている背景の一つには、国が推し進める“地域医療構想”があります。
地域医療構想とは、少子高齢化による人口減少を見据えて、地域別に良質、かつ適切な医療を提供する体制を整えるための計画です。
患者さんの病状や治療段階に応じて医療機関の役割を4つに分け、効率的に医療を提供することを目指しています。
たとえば、急を要する病気の治療を行うのはA病院、治療後のリハビリが必要な患者さんを受け入れるのはBの一般診療所といったように、ラベル分けされるイメージです。
地域内に役割が重複する施設が複数ある場合、地域医療構想に基づき、病床数が少ない有床診療所は今後も集約・廃止の対象となりえます。
参照元:厚生労働省「医療施設動態調査(令和7(2025)年11月末概数)p1」
無床診療所数の推移
有床診療所数は減少傾向にあるのに対し、無床診療所数は増加傾向にあります。
厚生労働省が実施した『医療施設動態調査』によると、2025年11月末時点での無床診療所数は100,552施設でした。
前年は100,000施設であり、1年間で552施設増加したことがわかります。
また2023年までの過去3年間のデータでは、2021年は98,257施設、2022年は99,422施設、そして2023年は99,810施設でした。
このように無床診療所数が年々増加している主な理由は、病院や有床診療所に比べて低リスクで経営できるためです。
2024年度に実施された診療報酬改定の影響もあり、現在では多くの医療機関で経営の黒字化が難しい状況となっています。
診療報酬が低いということは、すなわち医療機関が国から受け取れるサービスの対価が少なく設定されていることを意味します。
特に有床診療所が受ける影響は大きく、人件費や固定費、管理費などの高騰に対し、改定率が追いついていないのです。
つまり、入院患者を十分に確保できない場合は経営が成り立たなくなる可能性が高いということです。
病床を持たなければ経営に必要な人件費や設備・維持費などを抑えられるがゆえ、無床診療所に転換するケースが相次いでいます。
無床診療所には赤字経営のリスクを軽減し、継続的かつ安定的な経営ができる、といった利点があるため、施設数が増えているといえます。
参照元:厚生労働省「医療施設動態調査(令和7(2025)年11月末概数)p1」
参照元:厚生労働省「医療施設動態調査(令和6年11月末概数) p1」
参照元:厚生労働省「医療施設動態調査(令和5年11月末概数) p1」
参照元:厚生労働省「医療施設動態調査(令和4年11月末概数) p1」
参照元:厚生労働省「医療施設動態調査(令和3年11月末概数) p1」
開業医数が増えている理由
有床診療所と無床診療所で増減が分かれたものの、一般診療所全体では施設数の増加が続いています。
この結果から「施設数の増加に伴い開業医数も増えている」とは断言できませんが、新規開業や分院展開が進み、開業医数に影響している可能性はあると考えられます。
では現在、開業医数が増えていると仮定した場合にどのような理由が考えられるのかを、以下で見ていきましょう。
開業医数が増えている理由
- 収入増が期待できるため
- 医師の働き方改革が適用されたため
- 医療需要が変化しているため
収入増が期待できるため
開業医の年収は勤務医よりも総じて高く、この点が開業医数の増加につながっていると考えられます。
2025年に公表された厚生労働省の調査によると、個人の一般診療所(青色申告者を含む)の平均損益差額は約2,631万円です。
これは開業医の実質的な年収に相当しますが、所得税が差し引かれたり、借入金を支払ったりしたあとの手取りは、これより少なくなります。
対して、勤務医の平均年収は約1,484万円となっていますが、税金や保険料が差し引かれた手取り額は、おおむね1,000万円前後にとどまるケースが多いようです。
開業医の収入が高い理由は、経営者という点以外に「診療の自由度が高い」「税制優遇制度を活用できる」なども挙げられます。
診療日数や診療時間、自由診療の有無などの事業運営に関する事項を開業医自身で決められるので、裁量次第で収入を伸ばせる可能性があるのです。
参照元:厚生労働省「第25回医療経済実態調査(医療機関等調査)報告p314,p625」
医師の働き方改革が適用されたため
2024年4月から医師の働き方改革が本格化したことも、開業医数の増加につながっているのかもしれません。
医師の働き方改革とは、勤務医の長時間労働を制限し、安全で持続可能な医療を提供するための体制を整える取り組みです。
過重労働の是正やワークライフバランスの向上などが期待できる一方、収入の減少や外来の縮小などが懸念されます。
「自由度の高い働き方を求めている」「収入を増加させたい」といった希望を抱く勤務医にとって、この点は大きなデメリットとなっているのでしょう。
こうした働き方の変化によって開業が選択肢の一つとなり、実際に開業医にシフトする医師も増えているのだと考えられます。
医療需要が変化しているため
現在の医療需要は、地域医療構想の進展や医療ニーズの多様化などに伴い、大きく変化しているといわれています。
完治を目指す一方、病気と共存するための治療も求められるようになり、地域の無床診療所の需要が高まりつつあることが、開業医数の増加に関係しているのかもしれません。
また厚生労働省の報告では、2020年から2040年にかけて85歳以上の在宅医療の需要は、62%増加すると見込まれています。
高齢者人口が増加するにつれ、外来や在宅医療の必要性は一段と高まってくるわけです。
このように、地域密着型かつ良質な医療を提供できる無床診療所が必要とされているからこそ、開業医を目指す医師も増えていると予想できます。
参照元:厚生労働省「新たな地域医療構想の現時点の検討状況について(報告)p9」
クリニックの新規開業の件数が増える季節は?
準備が整えばいつでもクリニックを開業できますが、安定した経営基盤を築くにはいくつかの要素を考慮し、タイミングを見計らうのが賢明です。
その要素の一つに季節があり、クリニックの新規開業の件数は春季の4~6月にピークを迎えます。
春は補助金の受付が始まったり、医療制度の改正が実施されたりと、新年度の取り組みが本格化するため、開業準備を計画的に進めやすい時期なのです。
また、新生活の開始に伴って入職する医療人材やかかりつけ医を探す患者さんが増える時期でもあるので、開業後にクリニック経営を軌道に乗せられる可能性が高いでしょう。
開業医の割合
働き方や社会的なニーズの変化などにより、今後も開業を選択する医師が増加することが想定されます。
現在では、医師総数における開業医の割合はどのようになっているのでしょうか。
2024年に厚生労働省が公表した『医師・歯科医師・薬剤師統計の概況』によると、日本国内の医師数は347,772人でした。
そのうち診療所の開設者又は法人の代表者は70,046人で、医師全体の20.1%、つまり5人に1人が開業医であるということになります。
参照元:厚生労働省「令和6(2024)年 医師・歯科医師・薬剤師統計の概況p4」
開設数の多い診療科目
開業医を目指すにあたって、開設数の多い診療科目は押さえておきたいところです。
現在、日本国内では診療科目別の開設数に関するデータは確認できませんが、韓国の政府機関である“健康保険審査評価院”の資料には、参考となるデータがありました。
同機関の資料によると、2018年から2022年に一般医が開業した診療科目としては、皮膚科がもっとも多く、開業院979箇所のうち86%を占めています。
次いで多かったのは、整形外科の42%でした。
日本国内においても、皮膚科の施設数は増加傾向にあるようです。
2023年に公表された厚生労働省の調査によると、皮膚科は13,185施設で、前回の調査と比べて775施設増加しています。
これはあくまでも施設数の推移であり、開設数を示すものではありませんが、皮膚科の需要は高まっていることがうかがえます。
参照元:毎日経済 韓国代表経済メディア「「開園も勝手にできないか」…脅威、免許制の改善案の拒否」
参照元:厚生労働省「令和5(2023)年 医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況 p36」
医師の開業規制とは
開業医を目指すうえでは医師数や施設数の現状だけではなく、“開業規制”についても把握しておきましょう。
開業規制とは、地域医療構想に基づき、医師が多い地域でのクリニックの新規開業を制限する制度です。
医師の偏在問題を解消し、地域に必要な医療を提供することを目的に、2026年春以降から順次施行される予定となっています。
この制度の対象地域は外来医師が特に多い地域で、“外来医師過多区域”ともよばれます。
2026年1月に開催された厚生労働省の社会保障審議会医療部会では、東京23区や大阪市などの9つの地域が候補に挙げられました。
開業規制が施行されたあと、外来医師過多区域に指定されている地域での開業を希望する場合は、都道府県への届け出や行政との調整が必要になります。
状況に応じて開業時期を再考したり、地方での開業を検討したりと、長期的な視点から開業計画を立てることが重要です。
なお、規制と聞くと「開業ができなくなるのではないか」と思われるかもしれませんが、この制度は開業を禁止するものではありません。
あくまでも開業地域の戦略的な考え方を求めるものであり、開業の自由は保たれますのでご安心ください。
収入増や医師の働き方改革などにより、開業医が増加している可能性がある
現在、確認できる最新のデータ(2025年11月末時点)によると、日本国内の医療施設の総数は179,208施設でした。
このうち一般診療所は105,683施設あり、年々増加を続けています。
断言はできないものの、一般診療所数の増加は幾分か開業医数にも影響しているでしょう。
開業医数の増加が予想される背景には「勤務医よりも収入が高い」「医師の働き方改革の影響を受けている」などがあります。
今後、開業を目指す医師は開業規制を把握したうえで、計画を立てることが重要です。
しかし、ご自身だけでは詳細な開業計画の検討が難しく感じるかもしれません。
そうしたときには、マツキヨココカラが提供するクリニック開業サポートをぜひご活用ください。

