独立を考える医師のなかには、医療モールを選択肢に据えている方もいらっしゃることでしょう。
医療モールで安定した経営を叶えるためには、概要をきちんと理解したうえで、適切に準備することが大切です。
そこで本記事では、医療モールの特徴とメリット・デメリットについて解説します。
クリニック経営を成功させるための、一助となれば幸いです。
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医療モールとは？
医療モールとは、診療科目が異なる複数のクリニックと調剤薬局が一つの建物や敷地内に集合している医療施設のことです。
主な役割は、地域住民に総合的な初期医療を提供することです。
患者さんは、診療科目ごとにクリニックを訪ね歩いたり、遠方の総合病院へ赴いたりする必要がなくなるため、一度の外出で複数の診療科目を手軽に受診できます。
また、総合的な初期治療を医療モールで提供できるので、重篤の患者さんに対応しなければならない総合病院の受け入れ負担も減り、円滑でより適切な医療提供が可能となるのです。
さらに、医療モールは開業場所としてもさまざまなメリットがあることから、医療体制の発展にもひと役買っているといえるでしょう。
医療モールで開業するメリットについては後述しますので、引き続きご覧ください。
医療モールの種類
医療モールの運営形態には、以下の3種類が存在します。
医療モールの種類
- ビル型
- ビレッジ型
- 併設型
ビル型
ビル型は、建物内のすべてのテナントにクリニックや調剤薬局が入居している医療モールです。
医療提供を目的として設計されているため、医療設備の導入がしやすいほか、バリアフリーにも対応していることが多いという特徴があります。
ビレッジ型
異なる診療科目のクリニックが複数と、調剤薬局が同じ敷地内に戸建てで集合しているのがビレッジ型です。
ビル型と同様、医療施設として設計されています。
各クリニックが独立した建物であるため、外装および内装をクリニックのコンセプトに合わせて自由に設計できます。
また、ビレッジ型は敷地面積が広い土地に建設されるのに伴って、他院と共有する駐車場が広いことも特徴です。
併設型の種類
| 併設型の種類 | 特徴 |
| 商業施設併設型 | ショッピングモールのような商業施設の一角にクリニックや調剤薬局などが併設されている。買い物とあわせて利用できるため、集患を促しやすい |
| オフィス併設型 | オフィスビルに医療モールが併設されている。ビル内で勤務している、またはオフィス街に集まる患者さんを受け入れやすい |
| レジデンス型 | マンションのような集合住宅の一部分にクリニックや調剤薬局が併設されている。併設するマンションの住民からかかりつけ医として認知されやすい |
併設型はいずれの種類も日常生活に近接した場所にあるため、患者さんに親しまれやすく、利便性の高い医療施設として開業できます。
医療モールのオーナー
医療モールのオーナーは、調剤薬局を運営する企業や、調剤薬局を運営する企業と提携する地主が務めるケースが多いといわれています。
調剤薬局の主な収益源は医療機関からの処方箋であるため、複数のクリニックが集中的に存在する医療モールは重要な収益拠点となるわけです。
医療モールが注目される背景
医療モールは、患者さんと医療提供者側の双方にメリットがあるという点で注目されています。
患者さんは医療モールに足を運べば、診療科の異なる複数のクリニックを移動したり、遠方の総合病院に来院したりすることなく総合的な医療が受けられるのです。
近年、超高齢化社会となった日本では、地域医療の充実が喫緊の課題です。
地域の総合医療を支える医療モールは、まさに時代に求められている医療体制の一つといえるでしょう。
医療モールでクリニックを開業するメリット
利便性や地域医療の充実といった点で注目を集める医療モールは、開業を志す医師にとってもメリットがあることで知られています。
医療モールでのクリニック開業には、具体的に以下のような4つのメリットがあります。
医療モールでクリニックを開業するメリット
- メリット①高い集患力が期待できる
- メリット②開業費用を削減できる
- メリット③スムーズな資金調達が見込める
- メリット④ほかの診療科と連携できる
メリット①高い集患力が期待できる
医療モールのクリニックは、集患力が高いというメリットがあります。
医療モールは、アクセスに優れている場所に立地していることが多く、広報活動に特段力をいれなくても、集患を促しやすいのが特徴です。
とりわけ、既存の医療モールで開業する場合は、他院へ通院する患者さんから認知してもらいやすくなるため、おのずと集患を促せるのが大きな利点です。
また大型商業施設に併設されている場合は、来店する患者さんに認知してもらいやすいうえ、買い物の前後に受診できるので、利便性の高いクリニックとして開業できます。
メリット②開業費用を削減できる
単独で開業するのと比べて初期費用が抑えられるのも、医療モールで開業するメリットの一つです。
クリニックを開業するには、土地や建物の用意、看板や駐車場の設置、トイレや待合室の整備などが不可欠です。
単独で開業する場合、こうした設備投資は全額自己負担となり、初期費用がかさんでしまいます。
一方、医療モールで開業する場合はスペースや施設の多くが複数のクリニックで共有となるため、初期費用を抑えられるのです。
これにより、クリニック内の設備投資に資金を使用する余裕も生まれ、ご自身が望むかたちでの開業もしやすくなります。
メリット③スムーズな資金調達が見込める
クリニックの開業を自己資金だけでまかなえない場合は、金融機関をはじめとする外部からの融資が必要となります。
融資を受けるにあたっては、収支計画の妥当性や過剰投資の有無が重点的に審査されます。
医療モールでの開業は、初期費用が抑えられるうえに集患も促しやすい環境であるため、審査も通りやすくなるというわけです。
したがって、医療モールでの開業は、独立を急ぎたい方にうってつけの選択肢といえるでしょう。
メリット④ほかの診療科と連携できる
医療モールでの開業は、異なる診療科目と連携を取りやすいのが特徴です。
診察の結果、ほかの診療科目での診察・治療が必要になるケースがあります。
このような場合、患者さんに提携する他院を紹介することになります。
しかし、患者さんにとってみれば、別の場所へ受診しに行かなければならない手間が発生するため、医療をスムーズに受けられません。
医療モール内に別の専門診療科目のクリニックがあり、そこへ紹介してもらえれば、異なる診療科目での診察・治療も、一度の訪問で完結できます。
ほかの場所へ移動する手間もなくスムーズに案内できるので、患者さんからの顧客満足度も高めやすくなるわけです。
医療モールでクリニックを開業するデメリット
このように、医療モールでのクリニック開業にはさまざまなメリットがあります。
一方で、以下のようなデメリットにも注意しなければなりません。
医療モールでクリニックを開業するデメリット
- デメリット①患者さんの集患競争が起こりやすい
- デメリット②固定費が高い傾向にある
- デメリット③制約が多くなる
- デメリット④医療モール内での関係づくりが必要になる
デメリット①患者さんの集患競争が起こりやすい
医療モール内で開業すると、患者さんの集患を巡って、同施設内のクリニックが競合になる可能性があります。
特に、インフルエンザの予防接種のように、小児科や内科などの複数の診療科目で行われる治療は、患者さんの取り合いが発生しやすい傾向にあるのです。
医療モールでの開業を検討する際は、既存のクリニックが提供する診療内容をきちんと確認し、差別化の工夫をすることで患者さんの獲得競争を避けられるでしょう。
デメリット②固定費が高い傾向にある
医療モールは、集患しやすい場所に位置しているため、賃料や管理手数料といった固定費が高くなりやすいといわれています。
特別な集患対策が必要ないとはいっても、クリニックの開業直後は売上が安定するまでに時間がかかることもあります。
開業後、経営をスムーズに安定させるには、売上確保の工夫と固定費をカバーする資金計画の立案が重要です。
デメリット③制約が多くなる
開業時にいくつかの制約が課されるのも、医療モールでクリニックを開業するデメリットの一つです。
単独で開業する場合は、立地や設備、診察時間まで自由に決めることができます。
しかし、医療モールは複数のクリニックが使用する目的で建設されているため、設備や診察時間などで共通ルールに従わなければならない場合もあるのです。
医療モールで開業する際は、課されるルールが許容できるものなのかどうかを確認し、これを順守することが重要です。
デメリット④医療モール内での関係づくりが必要になる
単独でのクリニック開業とは異なり、医療モール内には複数のクリニックが集結しています。
患者さんを紹介しあうことができるというメリットを十分に生かすには、他院との連携が不可欠です。
これには密接なコミュニケーションと他院への配慮を要するため、クリニック間の円滑な連携を叶えるには日頃から良好な人間関係の構築に努めなければなりません。
また、これとあわせて調剤薬局との関係づくりにも努めましょう。
医療モールは診療から薬のお渡しまで一つの施設内で完結できるのがメリットです。
しかし、調剤薬局が長い待ち時間やスタッフの態度の悪さから不人気となれば、自院からも患者さんが離れてしまうおそれがあります。
医療モールでの開業を考えている方は、調剤薬局の評価や方針も理解したうえで連携することが求められます。
医療モールでのクリニック開業を成功に導くポイント
医療モールでのクリニック開業を成功させるには、安定した集患を見込める立地にあるかどうかを見極めることが大切です。
医療モールの恩恵はあくまでも、“開業に適した立地”や“連携しやすい他院の存在”、“需要の高い診療科目”といった一定の条件がそろった場合に得られるものです。
開業後に安定的な経営を叶えるためには、念入りな情報収集が必要となります。
まずは、開業を検討する医療モール周辺の世帯数や年齢層、求められている医療形態、現地の雰囲気などを確かめましょう。
とはいえ、実際にどのような環境が適しているのかを正確に判断するのは、非常に手間がかかります。
勤務医として従事している場合、コア業務と併行して準備するのが難しい方もいらっしゃるはずです。
このようなときは、クリニックの開業に特化したコンサルタントに相談してみるのがおすすめです。
上述の情報収集のほか、開業に適した案件の選定や開業の広報活動などのさまざまなサポートが受けられるため、開業準備をスムーズに進めることができます。
医療モールは集患を促しやすいうえに初期費用を抑えて開業できる
医療モールとは、複数のクリニックと調剤薬局が同施設内に集まる医療施設のことです。
一度の外出で複数の診療科目を受診できるという利点があり、患者さんにとっても利便性の高い施設として知られています。
集患を促しやすいほか、開業資金を抑えられるため、独立を考える医師の選択肢としても非常に有効です。
しかし、安定的な経営を実現するには徹底的な情報取集と適切な立地の選定が不可欠であり、それにはかなりの時間を要します。
開業時の負担を減らし、安定したクリニック経営を目指したい方はぜひマツキヨココカラの開業サポートへご相談ください。
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