開業を検討しているものの、「どのような準備が必要かわからない」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本記事では、脳神経外科の開業資金の目安をお伝えしたうえで、開業を成功させるポイントを解説します。
脳神経外科の開業について詳しく知りたい方は、ぜひご一読ください。
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脳神経外科の現状
まずは脳神経外科の現状を、厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」「医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況」を参考に見ていきましょう。
医師・歯科医師・薬剤師統計の概況
2020年 | 2022年 | |
医師の総数 | 323,700人 | 327,444人 |
脳神経外科医 | 7,349人 | 7,516人 |
医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況
2020年 | 2021年 | 2022年 | 2023年 | |
医療施設の総数 | 178,724か所 | 180,396か所 | 181,093か所 | 179,834か所 |
脳神経外科を標ぼうするクリニック | 1,804か所 | – | – | 1,881か所 |
脳神経外科を標ぼうする一般病院 | 2,612か所 | 2,609か所 | 2,617か所 | 2,628か所 |
上記を見てわかる通り、脳神経外科を主たる診療科にする医師は、2022年時点では7,516人で、2020年時点から微増していることがわかります。
しかし、厚生労働省は「診療科ごとの将来必要な医師数の見通し」で、2020年から2036年までに、「脳神経外科医が2,500人以上増えることが望ましい」と言及しています。
つまり、2020年時点で脳神経外科医の数は、目標数から2,500人以上不足しているというわけです。
現状を鑑みても脳神経外科医が不足しているのは明らかなうえに、人口減少に伴い、今後ますます担い手が減少していくと見込まれています。
また、脳神経外科を掲げる医療施設の数は増えつつあるものの、地域によって偏在しており、特に地方や過疎地域での不足は顕著です。
これらを踏まえると、脳神経外科医の不足は今後も加速するおそれがあるうえに、施設数が不足する地域も多いため、脳神経外科は需要が高い診療科であることが伺えます。
参照元:厚生労働省「令和2(2020)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況p5」
厚生労働省「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況p5」
厚生労働省「令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況p1,7,8」
厚生労働省「令和3(2021)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況p1,7」
厚生労働省「令和4(2022)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況p1,4」
厚生労働省「令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況p1,4,5」
脳神経外科の開業にかかる費用はどのくらい?
脳神経外科を掲げるクリニックの開業に必要となる資金は、6,000万~3億円程度といわれています。
開業資金の主な内訳は、以下の通りです。
脳神経外科の開業資金の主な内訳
- 敷金・礼金・仲介手数料
- 内装工事
- 医療機器
- 医師会入会金
- 什器備品
- OA機器
- 開業費
- 広告費
- その他備品
- 開業後の運転資金
上記はあくまでも一例に過ぎませんが、脳神経外科の開業にはさまざまな費目が存在します。
なかでも高額なのは、MRI(磁気共鳴画像診断装置)やCT(コンピュータ断層診断装置)、電子カルテなどの医療機器です。
たとえば、MRIの導入費用は7000万円程度、CTの導入費用は2000万円程度となっており、機器の導入費用の合計が1億円以上にのぼることも珍しくありません。
また、医療機器によっては安全に運用するための施設基準を満たす必要があるため、建物の賃料も高額になります。
なお、MRIやCTなどの導入は必須ではなく、該当業務を外部の画像診断センターへ委託することが可能です。
実際に、都内の脳神経外科はMRIやCTによる検査を外部へ委託しているクリニックは多数存在します。
しかし特定の地域では確定診断が必要となり、これらの医療機器の導入が必須であるため、地方での開業を検討する方は開業資金がより高額になる可能性があります。
自己資金や運転資金はどの程度必要か
開業に際して用意する自己資金は、可能な限り多くあるに越したことはありません。
また、開業後の利益を安定させるまでに必要な運転資金は、一般的に3,000万円程度といわれています。
脳神経外科の開業方法は、MRIやCTなどの高額な医療機器を導入するか否かの2つに分かれます。
高額な医療機器を導入した場合の開業資金は数億円程度、導入しない場合の開業資金は5,000万~6,000万円程度です。
融資を前提とした場合、前者は潤沢な自己資本がなければ資金繰りに苦労する可能性があります。
さらに、MRIやCTは、導入費にくわえて維持費も高額なため、上記で示した以上の運転資金が必要になる場合もあります。
しかし後者であれば、経営が軌道に乗れば無理なく返済できる金額なので、自己資本が0円でも開業することが可能です。
クリニック開業に必要な資金についてもっと知りたい方はこちら
関連記事:クリニックの開業に必要な資金はいくら?診療科目ごとに解説
脳神経外科の開業医の平均年収
脳神経外科の開業医の平均年収は、公的な資料がないため正確に示すことはできませんがが、一般的には1,500万~2,000万円以上といわれています。
しかしこれはあくまでも目安であり、クリニックの事業規模によっては、年収をさらに高めることも可能です。
先述したように、脳神経外科の開業は高額な医療機器を導入するか否かの2つのパターンに分けられ、これにより年収も大きく異なります。
MRIやCTを導入すれば自院で提供できる医療の幅も広くなるため、事業が安定すれば年収も高くなるというわけです。
なお、いずれの場合でも開業直後は、利益を運転資金や返済などに充てなければならないので、収入が安定するまでには時間を要することに留意しておきましょう。
脳神経外科を開業する魅力
脳神経外科を開業するうえでの大きな魅力は、勤務医として働くよりも高収入を目指せることです。
脳神経外科医の平均年収は、勤務医で1,500万円程度、開業医で1,500万~2,000万円以上といわれているため、独立することでより高い収入を得られる可能性があります。
そのほか、自身の裁量で業務量を調整できるため、ワークライフバランスを取りやすいといえます。
しかし、これらの恩恵を受けるためには開業資金のほか、勤務医時代には必要とされなかった経営者としての視点が必要です。
具体的にどのような視点を持つべきなのかは、次項で解説しますので引き続きご覧ください。
開業医のメリット・デメリットについて詳しく解説している記事はこちら
関連記事:開業医とは?やりがいやメリット・デメリットを詳しく解説!
脳神経外科の開業を成功させるポイント
脳神経外科の開業を成功させるために、以下で紹介する4つのポイントを押さえておきましょう。
ポイント①開業資金をもとに立地と診療方針を決定する
脳神経外科は、開業資金に応じて開業する立地および診療方針を決定しましょう。
脳神経外科は、正確な診断と外科治療を要する病気が多い診療科目であり、そのすべてに対応できる医療機器を揃えるには、巨額の設備投資が必要です。
たとえば、MRIやCTによる検査が必要な患者さんが来院しても、これらの機器を導入したクリニックでなければ対応できません。
このようなときは、必要な機器を持つ画像診断センターや病院、クリニックに委託することで、自院では対応が難しい領域をカバーします。
そのため、MRIやCTを導入せずに開業する場合は、円滑に連携できる医療施設が近距離にある立地を選ぶことが重要です。
ただし、地方や郊外での開業を検討する場合は、連携可能な医療施設が近隣にないことも考えられます。
開業を検討する際は、開業資金を考慮したうえで、立地と診療方針を判断することが重要です。
ポイント②集患対策を徹底する
脳神経外科の開業後、安定した経営を実現するには、まずは以下のような集患対策を徹底しましょう。
脳神経外科の主な集患対策
- 診診連携の強化
- 頭痛外来の設置
- 積極的な広報活動
脳神経外科の集患には、上記の対策が有効です。
脳神経外科は、特定の医療機器の有無によって提供できる医療が異なる点から、対応可能なほかの医療施設に業務を委託する“診診連携”を行うケースが多くあります。
他院に患者さんを紹介するだけではなく、自院が提供する医療によっては他院の患者さんの受け入れも可能になるため、連携を強めればより多くの集患につながります。
また、頭痛外来の設置も効果的な集患方法の一つです。
近年、片頭痛や緊張性頭痛に悩む患者さんが増えているので、これに注力することで集患および増患を見込めます。
MRIやCTといった高額な医療機器を、導入する必要がないというメリットもあります。
このほか、自院の広報活動も重要な集患対策です。
患者さんの来院を促すには、まずは自院の存在を知ってもらう必要があります。
開業する際は看板の設置やポスティング、ホームページの開設といったさまざまな広報活動も積極的に行うことが大切です。
ポイント③適切な人材を採用する
脳神経外科の開業時は、人材採用にも注力しなければなりません。
クリニックを開業するには、看護師や医療事務といったスタッフが必要になります。
さらに、MRIやCTを扱う場合やリハビリ対応を行う場合は、放射線技師や理学療法士、作業療法士といった専門スタッフの採用が不可欠です。
たとえ自院の診療方針が定まっても、こうした人材が不足していれば想定通りの医療を提供できないため、開業を検討する際は周到な準備が必要です。
またスタッフの対応の質は、患者さんの集患および増患に影響するため、採用後の指導・教育も徹底しましょう。
ポイント④内装にもこだわる
内装に配慮するのはすべてのクリニックに共通する課題ですが、特に脳神経外科では重要ポイントです。
脳神経外科を訪れる患者さんのなかには、車いすで来院する方や自立歩行が難しい方もいるため、スロープや手すりの設置など、バリアフリーへの意識が必要です。
これにくわえて、清潔感を保ち続けることにより、患者さんが落ち着いて過ごせる空間づくりにも努めましょう。
また、長い待ち時間は患者さんのストレスに直結するので、予約システムの導入や効率的なオペレーションの設計により、スムーズに案内できる体制を整備することも大切です。
脳神経外科を開業は、高額の医療機器を導入するか否かで難易度が変わる
今回は、脳神経外科の開業を成功させるポイントを、脳神経外科の現状とともに解説しました。
脳神経外科の開業資金は、MRIやCTといった高額の医療機器を導入するか否かで大きく異なります。
導入しない場合は、必要に応じてほかの医療施設へ円滑に案内できるように、該当機器を擁した施設から遠くない場所に開業するのが鉄則です。
また安定的な集患を促すために、広報活動のほか、需要が高い頭痛外来の設置も検討しましょう。
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