産婦人科の開業資金は?開業を成功に導くポイントも解説
産婦人科を開業するには、内装や医療機器の整備、スタッフの雇用などに多額の資金が必要です。
クリニックの規模によっては初期費用が高額になるため、資金面に不安を抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本記事では、産婦人科の開業に必要な資金の目安と内訳、さらに資金調達の方法を解説します。
必要な費用を把握し、開業準備をスムーズに進めるために、ぜひ参考にしてください。
目次 閉じる
産婦人科の開業に必要な資金
産婦人科を開業する際には、一般的に5,000万円程度の資金が必要とされています。
主な費用の内訳は、以下の通りです。
産婦人科の開業に必要な資金の内訳の例
- 不動産(敷金・礼金・仲介手数料など)
- 設計・施工費
- 医療機器の導入費
- システム導入費
- 院内設備費(家具・家電・PCなど)
- 採用経費
- 広告宣伝費(ホームページ制作・各種広告費用など)
- 資材費(パンフレット・診察券など)
- 人件費
- 社労士・行政書士への報酬
- 雑費(薬品・備品など)
上記のうち、内装・設備などに3,000万円程度、医療機器やシステムの導入費、広告宣伝費などには2,000万円程度かかると見込んでおきましょう。
なお、実際の開業資金は、立地や開業形態、分娩や不妊治療の有無など、さまざまな要因によって大きく変わります。
特に、分娩に対応する場合は病床の整備が必要となり、開業資金が1億円を超えるといわれています。
そのため、ご自身の事業計画に基づいて詳細な費用を見積もり、必要な開業資金を明確にすることが大切です。
開業資金について詳しく知りたい方はこちら
関連記事:クリニックの開業に必要な資金はいくら?診療科目ごとに解説
開業資金の調達方法
産婦人科の開業資金の目安がわかったところで、この項では資金調達の方法について解説します。
一般的に、クリニックの開業資金を自己資金のみでまかなうケースは少なく、不足分は主に以下に挙げる4つの方法で補います。
産婦人科の開業資金の調達方法
資金調達の方法 | 特徴 |
日本政策金融公庫からの融資 |
|
民間の金融機関からの融資 |
|
医師会の提携ローン |
|
地方自治体からの助成金・補助金 |
|
上記のうち、日本政策金融公庫は、多くの開業医が利用している政府系の金融機関です。
同機関が提供している融資にはいくつかの種類があり、なかでも“新規開業・スタートアップ支援資金”は、開業時の資金調達に活用できる代表的な融資制度として知られています。
日本政策金融公庫の利用が難しい場合は、民間の金融機関から融資を受けましょう。
ただし、金利や融資額、返済期間などが各社で異なるため、ご自身の財務状況を踏まえたうえで慎重に検討する必要があります。
また、医師会に加入している方であれば、医師会が斡旋している提携ローンを利用することが可能です。
医師向けに特別に設計されたローンであるため、クリニック開業時の資金調達を有利な条件で進めたい方にとって心強い選択肢となります。
さらに、各自治体が提供している助成金や補助金を融資とあわせて活用すれば、返済の負担を減らして開業資金を確保することができます。
参照元:日本政策金融公庫「新規開業・スタートアップ支援資金」
産婦人科の開業医の平均年収
ここからは、産婦人科の開業医になった際の年収の目安を見ていきます。
厚生労働省が実施した「第24回医療経済実態調査」によると、2022年時点で産婦人科の一般診療所(青色申告者を含む)の平均損益は、年間約3,103万円でした。(※)
これは、小児科の約3,949万円に次いで2番目に高い水準です。
ただし開業医は、上記の損益額から税金や社会保険料のほか、設備の維持費や人件費、広告宣伝費などを自己負担する必要があります。
そのため、年収としては損益額の半分程度になると考えておきましょう。
※無床クリニックの損益データを参考
産婦人科を開業するメリット
ここまで、開業に必要な資金やその調達方法、年収の目安について見てきました。
続いては、産婦人科を開業するメリットについて詳しく紹介します。
メリット①高収入が見込める
産婦人科を開業するメリットとして、比較的高い年収を得られる可能性がある点が挙げられます。
厚生労働省が実施した「令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況」によると、産婦人科を掲げるクリニックの数は、2023年時点で2,784軒です。
クリニック全体に占める産婦人科の割合は2.7%で、ほかの診療科に比べて競合が少ないことがわかります。
そのため産婦人科の需要が高い地域で開業すれば、供給が追いついていない状況を活かして、安定的な集患と高い収益性が期待できます。
参照元:厚生労働省「令和5(2023)年医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況11p」
メリット②女性医師の需要が高い
産婦人科は、患者さんの大多数が女性であることから、女性医師に対するニーズが高い診療科であるといえます。
なぜなら、「男性よりも女性の先生のほうが相談しやすい」と感じる患者さんが多く、女性医師の存在に安心感を抱くためです。
なかには、クリニックのホームページで女性医師が在籍しているかどうかを確認したうえで、来院を決める患者さんもいます。
このように、産婦人科では女性医師のニーズが大きいため、開業後は多くの患者さんに来院してもらえる可能性があります。
開業医のメリットややりがいについてはこちら
関連記事:開業医とは?やりがいやメリット・デメリットを詳しく解説!
産婦人科の開業を成功させるポイント
最後に、産婦人科の開業を成功に導くために実践したい6つのポイントを解説します。
開業準備を計画的に進めるために、以下の要点を把握しておきましょう。
産婦人科の開業を成功させるポイント
- ポイント①最適な立地を選定する
- ポイント②内装を工夫する
- ポイント③十分な人材を確保する
- ポイント④集患に向けた取り組みを強化する
- ポイント⑤不妊治療に対応する
- ポイント⑥女性向けのサービスを展開する
ポイント①最適な立地を選定する
産婦人科の開業において、成否を左右する要素の一つとして立地が挙げられます。
いかに質の高い診療体制を構築しても、立地条件が悪いと思うように集患できず、収益増は見込めません。
そのため、妊娠中や体調不良の患者さんが無理なく通院できるよう、駅や住宅街から近い場所を選ぶのがポイントです。
また、分娩に対応する場合は、その点も踏まえて立地を選ぶ必要があります。
病床の確保にくわえて、分娩監視装置や吸引娩出機などの医療機器の導入が不可欠なため、ある程度の広さが求められます。
さらに、医院長の自宅から近い場所を選ぶことも大切です。
入院中の患者さんが急な体調変化を起こした場合、ほかの産婦人科医が近隣に住んでいなければ、医院長が迅速に駆けつけて緊急処置を行わなければならないためです。
このように産婦人科の開業では、診療内容に応じた立地選びが重要になります。
ポイント②内装を工夫する
開業後も安定した収益を得るためには、内装にも配慮したいところです。
産婦人科では、落ち着いた印象と安心感を与える淡いピンク系や、清潔感のあるグリーンを基調とした内装デザインにするのがおすすめです。
また、女性の患者さんに同伴して男性が来院することも珍しくありません。
患者さんのプライバシーを守るためにも、男性の待合室を別に設ける、外来のみのエリアと分ける、といった配慮も求められます。
ポイント③十分な人材を確保する
産婦人科を開業する際は、看護師や医療事務などのスタッフを雇用する必要があります。
さらに、分娩を受け入れる場合は助産師の雇用も不可欠であり、入院にも対応するなら調理師や栄養士も採用しなければなりません。
このように、産婦人科では専門知識を持つ多くのスタッフを採用し、人員体制を整えることが、質の高い医療の提供につながります。
ただし、昨今は医療業界も慢性的な人手不足に陥っているため、なかなかスタッフが集まらない可能性があります。
開業後に人手不足で悩まないためにも、採用活動は早めに進めましょう。
ポイント④集患に向けた取り組みを強化する
産婦人科の開業を成功させるには、インターネットを活用した集患への取り組みも欠かせません。
患者さんの多くは、来院前にホームページやSNSでクリニックの情報を確認しています。
そのため、開業準備の段階からオンラインのマーケティング対策に取り組むことで、多くの患者さんに認知してもらえる可能性が高まります。
来院前に情報収集している患者さんは、「クリニックの雰囲気が知りたい」と望んでいることが多いため、医師やスタッフのほか、内装の写真を掲載すると効果的です。
ポイント⑤不妊治療に対応する
産婦人科の開業において、不妊治療に対応できるかどうかは、他院との差別化を図るうえで重要なポイントです。
近年、結婚年齢の上昇や不妊治療の社会的認知の向上を背景に、不妊治療を受ける患者さんの数は増加傾向にあります。
また、2022年4月から不妊治療の保険適用範囲が拡大され、経済的な負担を減らせるようになったことも、治療希望者の増加を後押ししていると考えられます。
不妊治療は少子高齢化対策としても注目されているため、今後も需要が見込まれる診療分野です。
診療の幅を広げたい方は、不妊治療の導入も視野に入れて開業準備を進めましょう。
ポイント⑥女性向けのサービスを展開する
患者さんの多くが女性であるという特性を生かすために、女性向けのサービスを充実させることも効果的な施策の一つです。
たとえば、一部の産婦人科ではマタニティヨガやアロマテラピーなどを提供しており、患者さんから高い評価を得ています。
開業時の導入が難しい場合は、経営が軌道に乗ってから、患者さんの要望を聞いて最適なサービスを取り入れるのがおすすめです。
クリニック開業時の内覧会のメリットとは?詳しくはこちら
関連記事:クリニック開業時の内覧会とは?流れやメリットを解説
産婦人科の開業には5,000万円程度の資金が必要!
今回は、産婦人科の開業資金の目安と内訳、また資金調達の方法を解説しました。
産婦人科の開業にあたっては、内装の設計・施工にかかる費用にくわえて、医療機器やシステムの導入費、広告宣伝費などに5,000万円程度の費用が発生します。
ただし、開業資金の額は立地や開業形態、分娩や不妊治療の有無によって変わります。
そのため、ご自身の診療スタイルを明確にしたうえで、必要な資金を算出することが重要です。
産婦人科の開業を検討しているのであれば、マツキヨココカラが提供するクリニック開業サポートがおすすめです。
初期投資や開業後の運転資金を踏まえた事業計画書の策定をサポートし、クリニック開業を全面的に支援いたします。
クリニック開業支援ならマツキヨココカラクリニック開業サポート