そのため、「将来は独立して年収を上げたい!」とお考えの方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、整形外科の開業医の平均年収や勤務医との収入差、さらに利益を最大化するためのポイントを解説します。
勤務医からの独立開業を目指す医師の方は、ぜひ最後までお読みください。
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整形外科の開業医の平均年収
整形外科の開業医に特化した公的な年収データは存在しないため、厚生労働省が実施した「第24回医療経済実態調査」をもとに、収入の目安を確認していきます。
なお、整形外科を個人で開業するケースでは有床クリニックを選ぶ例が少ないことから、本項では入院診療収益を含まない場合の損益について解説します。
さて、同調査によると整形外科の一般診療所(青色申告者を含む)の平均損益は、2022年時点で年間23,007,000円でした。
この金額は、医業収益と介護収益を足した額から、医薬品費や水道光熱費、設備機器の賃貸料などの経費を差し引いて算出しています。
ここからさらに税金や社会保険料のほか、家賃や地代、広告宣伝費などの自己負担が発生するため、最終的に手元に残る金額は少なくなることを把握しておく必要があります。
勤務医との年収の差
結論から述べると、整形外科の開業医と勤務医の年収には、10,000,000円ほどの差があります。
厚生労働省所轄の労働政策研究・研修機構の調査によると、整形外科の勤務医の平均年収は12,899,000円と報告されています。
一方、整形外科の開業医の平均損益は、先にお伝えしたように年間で23,007,000円と示されており、単純な比較はできないものの、勤務医の平均年収とは大きな差があるのです。
もちろん、勤務医も年収から税金や社会保険料などが差し引かれるため、正確な手取り額は不明瞭ですが、それを踏まえてもこの差は軽視できないものでしょう。
開業医の平均年収について詳しくはこちら
関連記事:開業医の平均年収は?勤務医との年収の差はどのくらい?
参照元:労働政策研究・研修機構「勤務医の就労実態と意識に関する調査p30」
整形外科を開業するメリット
整形外科を開業することで年収アップが見込める点は大きなメリットですが、開業医になることで得られる利点はこれだけではありません。
たとえば、開業医であれば診療時間を自由に決められるため、ワークライフバランスを重視した柔軟な働き方が可能になります。
これまで勤務医として激務をこなしてきた方であれば、疲労やストレスが和らぎ、心と身体の健康を維持できるでしょう。
さらに、スポーツ外傷や関節疾患など、ご自身が特に強みを持つ分野に特化すれば、専門性の高い独自の診療スタイルを築けることもメリットの一つです。
その結果、他院との差別化につながり、競合クリニックが多いエリアでも患者さんから支持を得られる可能性が高まります。
整形外科を開業するデメリット
整形外科の開業にはいくつかのメリットがありますが、デメリットも存在します。
特に、高額な開業資金が必要になるほか、経営者として診療以外の業務が生じる点は大きな負担となるでしょう。
クリニックを開業する際は、医療機器の導入や内装の整備、マーケティング対策などに多額の初期費用が発生します。
一方で、開業当初から多くの患者さんが集まるとは限らず、安定した収益を確保するまでに時間を要することも珍しくありません。
経営を軌道に乗せられなければ初期投資の回収が難しくなり、経済的な負担が増えてしまいます。
こうした資金面でのリスクを避けるには、日々の収支や経営状況などを的確に把握し、継続的に管理していくことが不可欠です。
そのため、開業医には医師としての診療スキルにくわえて、経営者としての視点や判断力も求められるのです。
資金繰りや集患対策、人事・財務管理といった経営全般の責任を負うことになり、診療のみに集中できなくなる場合があります。
開業になるメリット・デメリットについて詳しく紹介している記事はこちら
関連記事:開業医とは?やりがいやメリット・デメリットを詳しく解説!
整形外科を開業して収入を上げるためのポイント
ここからは、整形外科の開業にあたり、収入を増やすために実践したいポイントを、以下の9つに分けて詳しく解説します。
情報は多めですが、開業後の収益増に向けて、開業準備や経営計画を進める際の参考となりますので、ぜひ最後までお読みください。
整形外科を開業して収入を上げるためのポイント
- ポイント①開業場所にこだわる
- ポイント②広い敷地を確保する
- ポイント③理学療法士や作業療法士を採用する
- ポイント④高性能なリハビリ器具を導入する
- ポイント⑤通所リハビリテーションを取り入れる
- ポイント⑥自由診療の治療を行う
- ポイント⑦集患対策をする
- ポイント⑧スタッフ教育に力を入れる
- ポイント⑨承継開業を検討する
ポイント①開業場所にこだわる
整形外科を開業して安定した収入を得るためには、どのような患者さんでも無理なく通院できる立地を選ぶことが大切です。
少子高齢化が進む昨今、高齢の患者さんが多くなることは容易に想像できます。
また、整形外科に通院する患者さんのなかには、車いすで生活している方もいます。
そのため、高齢者や車いすの方が通院の負担を感じないよう、駅や住宅街から近い場所に開業するのがおすすめです。
さらに、車での通院を想定する場合は、広い駐車場を確保する、あるいは近くにコインパーキングがあるかどうかを確認しておきましょう。
ポイント②広い敷地を確保する
整形外科では、患者さんのリハビリに対応できるだけの十分なスペースを確保することが望まれます。
これによって、リハビリ対象者を多く受け入れることができれば、収益増につながるためです。
たとえば、運動器リハビリテーションを取り入れて運動療法や物理療法、装具療法などを実施する場合、少なくとも100㎡程度の広さが必要です。
また、後述する通所リハビリテーションにも対応するのであれば、利用者一人につき3㎡程度のスペースを要します。
多くのリハビリ対象者を受け入れて収益を上げるためには、このような敷地面積の条件を踏まえたうえで施設計画を進めることが大切です。
ポイント③理学療法士や作業療法士を採用する
リハビリが必要な患者さんに継続的に通院してもらうためには、理学療法士や作業療法士といった専門的な知識を有する人材の採用が必須です。
理学療法士を採用すれば、運動療法や物理療法を用いて、患者さんの日常生活における基本動作能力(座る、立つ、歩くなど)の回復や維持、向上を支援できます。
また、作業療法士を雇用することで、身体機能だけではなく精神機能の改善、さらに日常生活動作や社会的適応能力の向上を目的としたリハビリが可能になります。
このような有資格者を採用し、リハビリ体制を充実させることで、患者さんは安心して運動療法や機能訓練に取り組めるでしょう。
その結果、長期的な通院につながり、収益の安定化に結びつきます。
ポイント④高性能なリハビリ器具を導入する
整形外科の開業後、収入アップを図るうえで高性能なリハビリ器具の導入は欠かせません。
操作性に優れていることはもちろん、患者さん一人ひとりに合わせて調整できる器具だと理想的です。
たとえば、整形外科では“レッドコード”とよばれる、天井に取りつけた本体から赤いロープが垂れ下がっている構造のリハビリ器具が広く採用されています。
レッドコードの特徴は、体重が分散されるため関節への負担が少なく、ケガの直後でも可動域訓練や筋力トレーニングなどに活用できることです。
このような汎用性の高い器具なら、さまざまな患者さんに対応できるため集患対策にも期待でき、収益面でも一定の成果が見込めるでしょう。
ポイント⑤通所リハビリテーションを取り入れる
通院患者の診療にくわえて、通所リハビリテーションを導入することによって、収益の向上につながる場合があります。
通所リハビリテーションとは、高齢者や要介護認定を受けた方が、クリニックや介護老人保健施設などで、専門スタッフによるリハビリを受けられるサービスのことです。
公的な保険制度に基づいて提供されており、導入しているクリニックは利用者の要介護度に応じて、国や自治体から介護報酬を受け取ることができます。
この介護報酬を得られる体制を整備すれば、クリニックの収入源が増え、収益向上の一助となる可能性があります。
ただし、通所リハビリテーションでは利用者一人につき3㎡程度のスペースが必要であるため、クリニックの面積に見合った適正な受け入れ人数を設定することが大切です。
ポイント⑥自由診療の治療を行う
保険診療にくわえ、自由診療を行うことでも収益増が期待できます。
自由診療は保険適用外のため、クリニック側で治療費を自由に設定することが可能です。
保険診療に比べて高単価な治療を提供できることから、自由診療を受ける患者さんが増えれば、その分収益の増加が見込めるでしょう。
整形外科で取り入れられる自由診療の治療内容としては、ブロック注射やプラセンタ治療、PRP治療などが挙げられます。
ただし、これらの治療を行う場合は、具体的な費用や効果について患者さんに十分に説明し、理解を得ることが不可欠です。
ポイント⑦集患対策を実施する
収益の向上には、患者さんの定着と新規獲得の両方が必要であるため、集患対策は重要な要素です。
たとえ、不備のない診療体制を構築して開業準備を進めたとしても、開業するエリアの住民に認知されていなければクリニックを開いても集患は見込めません。
そのため、開業準備と並行して、ホームページの開設やSNSでの情報発信、Web広告の活用といった集患対策を講じることが大切です。
また、インターネットに不慣れな高齢者の方にも認知してもらうためには、チラシの投函や立て看板広告の利用など、オフラインでの対策も実施しましょう。
ポイント⑧スタッフ教育に力を入れる
一見、関係ないようにも思えますが、自院で働くスタッフの教育にもきちんと取り組むことで、収益の安定化、ひいては収入増につながる可能性があります。
なぜなら、スタッフの対応が親切であれば患者さんの満足度が上がり、再来院につながる可能性があるためです。
反対に、スタッフの対応が不十分で、患者さんから「不親切なクリニックだな」と思われてしまうと、再診を拒否されることもあるでしょう。
このように、スタッフの印象はクリニックの評価に直結するため、開業前からスタッフ教育にも力を入れることが重要です。
ポイント⑨承継開業を検討する
整形外科の開業医として高収入を狙うのであれば、“承継開業”という手段も有効です。
承継開業とは、すでにクリニックを経営している医師から、土地や建物、使用している医療機器、また働いているスタッフなどを引き継いで開業する方法のことです。
引き継ぎの対象はこれだけではなく、承継元のクリニックに通院している患者さんも含まれます。
クリニックを引き継いだあとも、ある程度の集患対策は必要ですが、すでに経営が軌道に乗っているクリニックであれば早期の収益化が期待できます。
整形外科の開業医になれば勤務医よりも年収が高くなる可能性がある
今回は、整形外科の開業医として働く際の平均年収や勤務医との収入差、収益性を高めるためのポイントを解説しました。
整形外科の医師として独立すれば、勤務医と比べて大幅な年収アップが見込めます。
開業後に収益を向上させるためには、リハビリ体制を充実させるほか、集患対策やスタッフ教育にも取り組むことが重要です。
また収入面だけではなく、開業医になれば柔軟な働き方が可能になり、ご自身が強みを持つ分野に特化した診療スタイルを築けるのも大きな利点です。
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