開業を成功させるには、これまでの経験や人脈、資金といった多くの要素が関わるので、タイミングが非常に重要です。
本記事では、開業に適した医師の年齢や年代別に注意したいポイントを解説します。
最良な開業時期を見極めるための、ヒントとなれば幸いです。
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開業医における年齢層の割合
まずは厚生労働省が令和4(2022)年に調査した、勤務医と開業医の年代別の割合をご覧ください。
勤務医と開業医の年代別の割合(2022年時点)
| 勤務医 | 開業医 | |
| 29歳以下 | 14.4% | 0.4% |
| 30~39歳 | 27.8% | 5.4% |
| 40~49歳 | 22.2% | 16.4% |
| 50~59歳 | 17.9% | 25.2% |
| 60~69歳 | 12.5% | 29.7% |
| 70歳以上 | 5.4% | 23% |
この調査結果から、開業医として働く方は40代以降が中心であることがわかります。
また、勤務医の割合は40代から徐々に減少し、反対に開業医の割合は40代以降で増加しているため、このタイミングで開業する医師が多いと推察できます。
40代以降は、豊富な臨床経験にくわえて経営スキルの習得や人脈の拡大など必要な準備が整っている可能性が高く、開業に適した時期なのかもしれません。
参照元:厚生労働省「令和4(2022)年医師・歯科医師・薬剤師統計の概況p6」
開業に適した医師の年齢
クリニックの開業は、医師としての経験値が高まる40~50代が適しているといわれています。
開業には、医療の知識にくわえて、経営スキルやスタッフの管理といった幅広い能力が求められます。
そうした総合的な能力が成熟する40~50代は、クリニックを安定して経営できる見込みが高いわけです。
また、年齢を重ねるにつれて自己資金が確保しやすくなり、開業時の借入金を削減できる可能性が高まります。
しかし、30代での早期開業も、資金調達やキャリア形成の面でメリットがあります。
特に年齢を重ねてから融資を受ける際は、返済期間が短縮されるケースも少なくありません。
その点、若い医師は「将来性があり、長く働ける」と金融機関から評価されるため、自己資金が少ない場合でも、比較的スムーズに資金を調達できるでしょう。
開業医として早くから経験を積むことで、自身の理想とする医療や経営も実現しやすくなります。
開業に適しているのは40~50代ではあるものの、開業資金の確保やキャリアプランを考慮したうえで、ご自身に適したタイミングを見極めることが大切です。
【年代別】開業する際に医師が注意したいポイント
クリニックを開業する際には、医師の年齢によって経営のリスクや求められる準備が異なります。
以下では、年代ごとに注意したいポイントをお伝えします。
開業する医師の年代ごとに注意したいポイント
- 30代で開業する場合
- 40代で開業する場合
- 50代で開業する場合
30代で開業する場合
30代でクリニックを開業する場合、患者さんから「若い先生は診療の経験が少ない」と判断されてしまい、集患できないケースも少なくありません。
たとえ勤務医のあいだに豊富な経験を積んでいたとしても、世間に広く認知されていなければ、開業後に来院患者数を増やすのは難しいでしょう。
また、30代は40代や50代の医師と比べると、経営の知識やマネジメントの経験が浅い方も多くいらっしゃいます。
そのため、開業する際は医療の知識とは別に、財務や労務、マーケティングといった経営の基礎知識を習得しておくことが重要です。
40代で開業する場合
40代は、医師にとってもっとも開業に適した年代といわれる一方、決断が遅くなるほど資金調達が困難になるリスクがあります。
特に40代後半で金融機関から融資を受ける場合、借入金の返済期間を短縮される可能性があるので、金額によっては毎月の経済的な負担が大きくなります。
これは、年齢が上がるにつれてクリニックを運営できる期間が短くなり、金融機関から返済リスクが高いと判断されるためです。
返済期間の短縮に伴い融資金額を減額される場合もあり、綿密な資金計画を立てることが重要です。
ただし、融資金額の2~3割程度の自己資金を確保できれば、金融機関の審査に通る可能性が高まります。
開業に向けて計画的に自己資金を準備するのはもちろん、万一の際には親族からサポートを受けるという選択肢も考えられます。
50代で開業する場合
50代でクリニックを開業する場合は、資金調達が難しくなることにくわえて、引退時の対応を見据えた経営が必要になります。
開業する年齢が50歳を超えると、クリニックの経営を続けられる期間が相対的に短くなるので、金融機関からの融資は40代よりもさらに厳しくなると考えられます。
十分な自己資金を確保できていない場合、理想のクリニックを開業するのは難しいでしょう。
また、開業する年齢が上がるほど引退の時期が早まるため、クリニックの譲渡、あるいは閉院を念頭に置いた経営が求められます。
「開業後はいつまで働くのか」「引退後はクリニックをどうするのか」といった点を明確にしたうえで、できるだけ早く開業することが大切です。
開業医が引退する年齢の目安
2025年11月現在、開業医の引退年齢に関するデータは確認できませんでした。
しかし、冒頭でお伝えした厚生労働省のデータによると、70歳以上の開業医の割合は高く、年齢を重ねても仕事を続けている方が多くいらっしゃいます。
開業医はいつまで働くのかを自身で決められるため、医師として長く働きたい方にとって、最適な選択肢です。
ただし、開業医を引退するにはさまざまな手続きが必要になります。
クリニックを譲渡する場合は買い手を探して契約を結ぶ必要がありますし、閉院する場合は患者さんの受け入れ先を探さなければなりません。
さらにこれらの手続きが完了したあとは、各種行政機関にクリニックの廃止届を提出する必要があります。
年齢を重ねるごとに心身の負担は増えていくため、65歳を目安に段階的に引退の準備を進めておくと安心です。
クリニックを開業した医師が抱える不安
多くの開業医が、引退するまでに以下のような問題に直面しています。
開業医が抱える不安
- ①後継者がいない
- ②借入金の返済が終わらない
- ③患者さんの受け入れ先が見つからない
①後継者がいない
クリニックの後継者が見つからないことは、開業医にとっての不安要素になります。
日本医師会が実施した調査によると、最近では都市部を中心に第三者継承やM&Aを選択する開業医が増えています。
これは医師自身にクリニックを託す親族がいない、あるいは親族が勤務医を希望するケースが増加しているためです。
親族が継承しない場合、体力的な問題や後継者を探す時間的余裕がなく、やむを得ず閉院するクリニックもあります。
第三者継承やM&Aを行うにも相応の時間が必要になるので、後継者が決まっていない場合には、計画的な準備が求められます。
参照元:日本医師会総合政策研究機構「日医総研ワーキングペーパーNo.492民間病院をめぐる事業承継・M&Aの最新動向p7,8」
日本医師会総合政策研究機構「日医総研ワーキングペーパーNo.440医業承継実態調査:医療機関経営者向け調査p8」
②借入金の返済が終わらない
開業時の借入金を返済できるかどうかも、開業医が抱える問題の一つです。
開業後、クリニックの経営が軌道に乗るまでには、一定の時間がかかります。
経営が不安定な状態が続くと収入が安定せず、借入金を計画的に返済するのが難しくなるでしょう。
特に年齢を重ねてから開業する場合、クリニックの運営期間が短くなるので、借入金額によっては引退時に債務が残る可能性があります。
また、閉院する場合は医療機器や薬剤の処分、スタッフの退職金といった費用が必要になります。
これらの負担によって借入金の返済に充てる費用が減ることが考えられ、返済にプレッシャーを感じるかもしれません。
借入金の返済が残るリスクを減らすためには、早い段階で事業継承を視野に入れた経営を行うことが大切です。
クリニックの譲渡によって得られた資金を借入金の返済に充てるだけでなく、医療機器を譲渡の対象に含めることで、閉院にかかる費用も抑えられます。
③患者さんの受け入れ先が見つからない
引退に伴い閉院する場合、患者さんの受け入れ先が見つからずに頭を悩ませる開業医も少なくありません。
特に地方のクリニックでは、近隣に同じ診療科を扱う医療機関が存在しないことも考えられます。
このような場合、患者さんの転院先が遠方になるだけでなく、地域住民の健康にも影響を与える可能性があります。
やむを得ず閉院するのであれば、患者さんの通院の負担が少ない転院先を探す、また地域住民へ早めに通知することが重要です。
クリニックを開業するメリット
クリニックの開業には不安が伴いますが、それを上回る魅力があります。
開業医となるメリットは、主に次の3つです。
クリニックを開業するメリット
- メリット①年収アップが目指せる
- メリット②ワークライフバランスが安定する
- メリット③大きなやりがいを感じられる
メリット①年収アップが目指せる
高収入を目指せるのは、クリニックを開業するメリットの一つです。
勤務医は基本的に固定給制かつ昇給の上限が決まっているため、年収を上げるのは簡単ではありません。
一方、開業医は自身で診療方針や運営方法を決められるので、戦略によっては大幅な年収アップが見込めます。
診療科により異なりますが、自由診療を取り入れたり、往診に対応したりと、経営の進め方を工夫することが収入に直結します。
メリット②ワークライフバランスが安定する
開業医は診療時間や休診日を自身で決められるので、仕事とプライベートのバランスが取りやすいのも魅力です。
くわえて、当直やオンコールの対応もないため、自身のライフスタイルに合わせて働けます。
メリット③大きなやりがいを感じられる
医師としてだけでなく、経営者として裁量を持って働ける点も、開業医ならではのメリットです。
自身の考えに基づいた診療方針や経営戦略を軸に、理想の医療を追求することは簡単ではありません。
しかし、一からクリニックをつくり上げていくのは、開業医でなければ味わえない大きなやりがいとなるはずです。
さらに、地域のニーズに合わせた医療の提供は、地域住民の健康支援につながります。
かかりつけ医として行政や介護施設と連携することで、クリニックに来院する患者さんにとどまらず、地域医療に貢献できます。
クリニックの開業を成功させるためにできること
クリニックを開業したあとも安定して経営を続けていくために、可能な限り対策を講じておきたいものです。
ここからは、開業の成功に役立つアプローチをお伝えします。
開業を成功させるための対策
- ①専門性を磨く
- ②経営について学ぶ
- ③専門家に相談する
①専門性を磨く
クリニックの開業を成功させるには、医師の年齢にかかわらず、専門性を高めることが重要です。
たとえば、認知症専門医や精神保健指定医などの専門性を証明できる資格を取得すると、患者さんの信頼を得やすくなり、集患力の向上が期待できます。
また、産業医の資格を取得すれば、企業の従業員に対してストレスチェックや産業医面談といった特定の業務が可能になり、安定した経営につながります。
②経営について学ぶ
経営に必要な知識を学ぶことも、開業を成功させるために不可欠です。
しかし、勤務医として働くなかで職場の運営に携わるのは難しく、経営の知識が浅いまま開業してしまうと、失敗するリスクが高まります。
経営やマーケティングの知識を学ぶには、書籍を活用するほか、セミナーに参加するのが一般的です。
しかし、最近ではYouTubeをはじめとするオンラインコンテンツでも情報を得られます。
これらの方法を活用することで、まとまった時間が取れない方でもすき間時間を使って効率的に学習できます。
特に20~30代の若い医師は、スタッフやチームのマネジメントを経験せずに開業するケースも珍しくありません。
開業後は自身でスタッフの教育やサポートを行わなければならず、経験が少ないと業務を円滑に進めることが難しくなります。
そうした状況を防ぐためにも、マネジメントを含めた経営の知識は習得しておきたいところです。
③専門家に相談する
開業を成功させる近道として、クリニックの開業や経営のプロに相談することも挙げられます。
独学で経営スキルを習得したとしても、診療と経営を両立するのは簡単ではありません。
さらに開業に際しては、立地の選定から資金調達、スタッフの採用、広告活動など、やるべき業務は多岐にわたります。
そこで、クリニックの開業に精通している専門家に相談するのも一つの手です。
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新規で開業する医師の年齢層は40~50代が多いものの、30代の早期開業も視野に
新規で開業する医師の年齢層は、勤務医として十分な臨床経験を積んだ40~50代が多い傾向にあります。
この年代は、医療の知識にくわえ経営スキルやマネジメントといった総合的な能力が成熟する可能性が高く、安定したクリニックの経営が見込めます。
ただし、開業時期が遅れるほど資金調達や借入金の返済が困難になるリスクもあるので、計画的に準備を進め、早期開業を目指すことが重要です。
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