開業医は、ご自身の理想とする医療を実現するための手段の一つです。
思い描いた医療をかたちにするには、クリニック経営で起こりうるリスクを事前に把握し、安定した経営を維持するための取り組みが必要です。
では、クリニック経営で生じるリスクにはどのようなものがあるのでしょうか。
今回は、開業医を目指す方が押さえておきたいリスクと、その備え方を解説します。
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クリニックの開業リスクとは?
開業医が直面する可能性のあるリスクには、以下のようなものが挙げられます。
クリニックの開業リスク
- 経営に関するリスク
- 医療ミスに関するリスク
- 法規制に関するリスク
- 想定外のトラブルに関するリスク
- 老後に関するリスク
経営に関するリスク
クリニックを開業する際には、経営失敗のリスクに留意したいところです。
開業医は医師であると同時に経営者でもあるため、財務やマーケティング、人材マネジメントなどの経営に関する幅広い知識が求められます。
勤務医として長く働いてきた場合は、こうした分野の知識が不十分であることも珍しくありません。
しかし中長期的な展望を持たないまま開業すると、変化の激しい医療業界においては、患者さんの新たな需要に対応できず、経営基盤が弱体化するおそれがあります。
経営失敗のリスクを回避するためには、事業計画や資金計画、立地選定、集患対策などの必要な知識を身につけ、不測の事態に備えて対応策を考えておくことが重要なのです。
医療ミスに関するリスク
クリニックの開業後、忙しい日々が続いて医師・スタッフの疲労が蓄積すると、医療安全上のリスクが高まります。
万が一医療ミスが発生した場合、開業医が負う責任は重大であり、高額な損害賠償を請求される可能性があります。
医師個人としての責任にくわえ、経営者としての責任も問われるためです。
それゆえにご自身だけではなく、スタッフが起こした医療ミスも開業医の責任となりえます。
損害賠償の負担による経営難に陥らないよう、医師賠償責任保険※に加入し、スタッフや患者さんと密にコミュニケーションを取るなどのリスクヘッジを図ることが大切です。
※……被保険者である医師が医療行為によって患者の身体に損害を与え、法律上の損害賠償責任を負う場合に、損害賠償金や訴訟費用を補償する保険。
法規制に関するリスク
開業医が直面するリスクには、法規制に関するものも挙げられます。
前述した医療ミスによる法的責任のほか、医療法の改正・厳格化や診療報酬改定などに適切に対応していない場合も、ペナルティが科されるおそれがあります。
また、クリニック経営では労働基準法や個人情報保護法など、医療行為とは直接関係のない法律についても要点を理解しなくてはなりません。
法律違反に伴うリスクを防ぐためにも常に最新の情報を押さえ、必要に応じて弁護士や社労士、税理士といった専門家と連携するとよいでしょう。
想定外のトラブルに関するリスク
ご自身の病気や怪我、また災害による想定外のトラブルもクリニックの開業におけるリスクとなります。
自院の医師がご自身のみの場合、病気や怪我で働けなくなると休診せざるを得ません。
災害によってクリニックが被害を受けた場合も同様です。
リスクに備えて必要な保険に加入していない場合、クリニックを開けられなければ収入は途絶えてしまいます。
開院できない期間中でも、家賃や人件費といった固定費は支払う必要があるので、経営へのダメージは大きくなるでしょう。
安定したクリニック経営を続けるためには、日々の健康管理はもちろんですが、所得補償保険や火災保険などによる備えも重要です。
老後に関するリスク
クリニックの開業に際しては、ご自身の老後について考えておくことも不可欠です。
近年では、クリニック経営の後継者が不足しているといわれていますが、後継者がいなければ閉院は避けられません。
また、経営者である開業医には退職金がないうえ、加入している国民年金の受給額は、厚生年金よりも少額です。
そのため、老後の資金計画を立てておかなければ、年齢を重ねるごとに生活の質が低下する可能性があります。
計画的な出口戦略や資金準備を心がけることが、老後のリスクを回避する鍵を握ります。
開業医が経営に失敗してしまうケース
クリニックの開業にはさまざまなリスクが伴い、その影響によって経営難に陥ることもありえます。
では、どのような場合に経営に行き詰まる可能性が高まるのでしょうか。
ここからは、開業医がクリニック経営に失敗するケースを6つお伝えしていきます。
失敗パターンを知り、開業前の心構えとして参考にしてください。
開業医が経営に失敗してしまうケース
- ケース①経営スキルが不足していた
- ケース②適切な資金計画が立てられなかった
- ケース③立地の選定を誤った
- ケース④集患対策ができていなかった
- ケース⑤スタッフの採用を失敗した
- ケース⑥データ管理を失敗した
ケース①経営スキルが不足していた
クリニックを開業しても、経営に関するスキルに問題があるとトラブルが起こりえます。
たとえば、財務や会計の知識が乏しい場合や資金計画をしっかりと立てずに開業した場合は、適切な収支管理ができず、資金繰りの悪化を招きます。
特に、開業直後は収益が不安定になりやすく、運転資金が不足しがちです。
また、診療を含む業務の負担が大きくなると、心身ともに疲弊して良質な医療の提供が難しくなることもあるでしょう。
その結果、医療ミスが発生したり、患者さんの満足度が低下したりすれば、経営を揺るがす問題に発展するおそれもあります。
開業医には、経営者としての決断力や洞察力といったスキルが求められますが、こうしたスキルは一朝一夕に身につけられるものではありません。
そのため、経営スキルに不安がある場合は専門家のサポートも視野に入れたいところです。
ケース②適切な資金計画が立てられなかった
先述の通り、資金計画をしっかりと立てずに開業すると経営難に陥る可能性があります。
クリニックを経営するうえでは運転資金が必要ですが、十分な用意がないと経費の支払いが困難になってしまいます。
また、医療機器の導入で多額の初期投資も発生しますが、やみくもに導入するとその分費用がかさむうえに、不要な設備まで揃えることにもなりかねません。
開業医として長く活躍するためにも、開業資金は多めに準備しておきましょう。
運転資金は最低3か月分、可能であれば6か月分用意しておくのが理想です。
そして「自院に必要な設備を洗い出す」「購入以外にもリースやレンタルを検討する」など、必要経費は詳細まで詰めておくことが大切です。
ケース③立地の選定を誤った
クリニックの開業場所の選定は、集患力を高め、経営基盤を強化するうえで非常に重要です。
どれほど医療機器が充実し、優れたサービスを提供していても、立地が悪ければ来院患者数が増えず苦しい経営が続いてしまうかもしれません。
「交通の便が悪い」「競合が多い」など、マイナスな条件が目立つエリアに開業しないためにも、立地の選定時には“診療圏調査”を徹底しましょう。
診療圏調査とは、その場所でクリニックを開業した場合、「1日あたりに来院が見込める患者さんの数がどの程度なのか」を推測するための調査です。
競合状況や地域の医療ニーズ、将来性などが明確になるので、好条件の候補地が選定可能になります。
開業候補地が決まったら実際に足を運び、アクセスや地域住民の年齢層、潜在的なリスクをご自身の目で確認することも経営失敗の防止につながります。
ケース④集患対策ができていなかった
質の高い医療を提供していたとしても、何もアクションを起こさなければ患者さんの来院は見込めません。
来院患者数を増やすには、まずクリニックの認知度を上げるため集患対策に取り組む必要があります。
具体的には、Web関連の施策とオフラインの施策を組み合わせて行うとよいでしょう。
Webサイトの作成やSEO対策、Web広告の運用と、駅看板の設置やチラシの配布などを同時に行えば、患者さんに自院を見つけてもらえる可能性が高まります。
ケース⑤スタッフの採用を失敗した
クリニックを運営する際には、医師以外にも看護師や受付スタッフ、医療事務スタッフなどが必要です。
しかし、採用のノウハウが不足していると、開業にあたって自院が求めるスタッフを確保できないおそれもあります。
採用に至っても技術が低かったり、患者さんへの対応が悪かったりしては、クリニックの評価にも影響を与えかねません。
もしスタッフが定着せず、短期離職が頻発してしまうと、業務が回らなくなってしまいます。
こうした採用による経営失敗のリスクを減らすには、採用計画の見直しにくわえて、専門家の知見を活用することが効果的です。
採用後は定期的に面談を行い、スタッフのモチベーション向上や悩みの解決につながるサポートを行いましょう。
ケース⑥データ管理を失敗した
カルテを適切に管理できていないことも、経営失敗の一因となる可能性があります。
紙カルテを使用する場合は、診療記録が増えるにつれて保管場所の確保が難しくなります。
こうした小さな負荷の積み重ねが、費用の増加や業務の効率低下を招き、経営の安定にも影響することになるのです。
クリニックの開業時に電子カルテを導入すれば、手間をかけずにカルテの管理ができ、経営上の問題が発生するリスクも減らせるでしょう。
ただし、電子カルテでも情報漏えいやデータ破損といった問題は起こりうるため、情報管理に関するスタッフの教育と、徹底的なセキュリティ対策が求められます。
クリニックの開業リスクを回避するためにできること
クリニックの開業後、経営難に陥らないよう開業医にできることはあるのでしょうか。
ここでは、開業リスクを回避するための5つのポイントを解説します。
開業医となり、クリニック経営を成功させるためにも、ぜひ参考にしてください。
クリニックの開業リスクを回避するためのポイント
- ポイント①クリニック開業サポートを活用する
- ポイント②ミニマム開業を検討する
- ポイント③保険に加入する
- ポイント④競合との差別化を図る
- ポイント⑤スタッフと良好な関係を築く
ポイント①クリニック開業サポートを活用する
クリニックを開業する際は、ご自身ですべて進めようとするのではなく、必要に応じて専門家の支援を受けることも大切です。
そこで活用したいのが、クリニック開業サポートです。
事業計画の策定から立地選定、人材採用、開業後のフォローに至るまで、開業に関わるすべてのプロセスをサポートしてもらえます。
これにより初めて開業医を目指す場合や経営の知識が少ない場合でも、クリニック経営をスムーズに軌道に乗せられるようになるでしょう。
マツキヨココカラでもクリニック開業サポートを提供しており、開業医と患者さんの双方のニーズを考慮して、優位性の高い案件をご紹介いたします。
経営のスタートアップのフォローはもちろん、開業後も集患対策をはじめとする包括的なフォロー体制が整っていますので、ぜひ一度ご相談ください。
ポイント②ミニマム開業を検討する
ミニマム開業とは、開業時の初期投資や運転資金を可能な限り抑え、小規模でクリニックを開業するスタイルのことです。
通常よりも少ない費用でスタートできるため、予算を集患対策に充てられます。
さらに、患者さんが少なくなりがちな開業直後でも安定した経営が可能になるでしょう。
電子カルテや予約システムなどを導入すれば、より少人数で業務を回せるようになり、スタッフを採用する負担も減らせます。
ミニマム開業は「クリニックを開業したいものの、資金面での不安が大きい」という場合の最適な選択肢となります。
ポイント③保険に加入する
万が一に備えて保険に加入しておくことも、クリニックの開業リスクを軽減する手立ての一つです。
開業医が加入を検討したい保険には、主に以下のようなものが挙げられます。
加入を検討したい保険
- 医師賠償責任保険
- 所得補償保険
- 火災保険
- 施設賠償責任保険
- 生命保険
上記のような保険への加入を検討する際には、「保険料の負担が大きくないか」「既加入の保険と補償内容が重複していないか」などを確認しましょう。
リスクに備えて複数の保険に加入した結果、費用がかさんで経営を圧迫する可能性もあるためです。
ご自身に必要な保険を見極めると同時に、無駄な支出を減らす工夫もクリニック経営においては重要です。
ポイント④競合との差別化を図る
これまでの経験や開業医自身の専門性を活かし、自院ならではの特色を打ち出すことは、結果としてクリニック経営の安定にもつながります。
たとえば、スポーツドクターの資格を持っている整形外科医であれば、クリニックのWebサイトや駅看板などで“スポーツ外来にも対応”と情報を発信するのが有効です。
そうすることで患者さんに自院の専門性を伝えられるだけではなく、競合との差別化を図れる可能性も高まります。
ポイント⑤スタッフと良好な関係を築く
クリニックを存続させるためには、スタッフとの信頼関係を構築し、良質な医療を提供することが欠かせません。
院内の人間関係の良さはクリニック全体の雰囲気を良くすることにもつながり、ひいては患者さんの満足度にも関係します。
スタッフが働きやすく、長く活躍できる環境をつくるためにも、日頃からコミュニケーションを積極的に取りましょう。
「教育や研修に力を入れる」「自院の目標を共有する」など、モチベーションの向上やチームワークの強化につながる取り組みを実践するのも一策です。
開業医が直面するリスクはさまざま。失敗パターンを把握して慎重に準備を進めよう
クリニックの開業に際しては、さまざまなリスクが伴います。
なかでも経営難に陥る要因としては「経営スキルが足りない」「最適な立地が選定できていない」などが挙げられます。
開業医となり、安定したクリニック経営を続けるためには、こうした失敗パターンを把握したうえで入念に対策しておくことが大切です。
クリニック経営の成功率を高めるなら、状況に応じて専門家の支援を受けることをおすすめします。
マツキヨココカラが提供するクリニック開業サポートも、その選択肢の一つです。
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