勤務医から開業医への道を目指しているものの、「実際にどれぐらい稼げるようになるのだろう?」と疑問に思われている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そこで本記事では、開業医の平均年収や勤務医との差、そしてさらなる年収アップを目指すためのポイントなどを解説します。
開業を検討されている、勤務医の方の参考となれば幸いです。
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開業医の平均年収
令和5年に厚生労働省が実施した「第24回医療経済実態調査」では、開業医の平均年収、つまり一般病院の病院長全体での平均給料年度額は2,476万円程度であることがわかっています。
なお、これらはあくまでも平均値であり、さらに額面である点は念頭に置きたいところです。
雇われている立場にある勤務医と異なり、開業医はクリニックの経営に必要なさまざまな経費を自己負担する必要があるため、実際の手取り額は1,600万円前後となります。
開業医と勤務医の平均年収の差は?
先ほどの調査結果を参照すると、勤務医の平均年収は1,306万円程度であることがわかります。
前述の通り、開業医の平均年収は2,476万円程度であるため、開業医になると年収は勤務医の1.8倍程度になるということです。
ただしこちらも前述したように、開業医の場合は年収=手取りではなく、また同様に勤務医であっても額面から税金や社会保険料などが引かれます。
手取りで見ると開業医は1,600万円前後であるのに対し、勤務医は850万~1,050万円とされているため、開業医の実際の収入は勤務医の1.5~1.8倍程度と捉えるとよいでしょう。
開業医と勤務医の年収の差についてより詳しく紹介している記事はこちら
関連記事:開業医が知っておくべき診療報酬とは?収益を上げる方法は?
開業医の年収に影響を与える要因
上記でお伝えした開業医の年収は、あくまでも平均値であるため、2,476万円より増える可能性もあれば減る可能性もあります。
開業医の年収は、主に“診療科目”“クリニックの所在地”の2つの要因の影響を受けます。
診療科目
開業医の年収、つまりクリニックの収入は、診療科目により大きく異なります。
第24回医療経済実態調査で発表されている、各診療科目の損益差額を見てみましょう。
こちらは、人件費や医薬品費、材料費などを差し引いた収益となるため、ほぼ開業医の年収と捉えて差し支えありません。
診療科目別・損益差額
診療科目
損益差額
内科
約2,423万円
小児科
約3,310万円
精神科
約1,476万円
外科
約2,408万円
整形外科
約1,386万円
産婦人科
約1,678万円
眼科
約2,323万円
耳鼻咽喉科
約1,913万円
上記を見るとわかるように、整形外科と小児科では収入に2倍以上もの差があります。
これは、小児科では定期的な予防接種や乳幼児健診などがあるため比較的安定した収入を得られることや、小児科特例加算などの診療報酬がやや優遇されていることが関係しています。
また、整形外科ではレントゲン設備やリハビリ機器などの初期投資や、専門知識を持ったスタッフの確保が必要な一方で、小児科ではほかの診療科ほど高額な医療設備が必須ではないことも挙げられるでしょう。
上記はあくまでも平均値ではありますが、このように診療科目ごとに損益差額が異なるため、開業医の年収にも直結します。
参照元:厚生労働省「第24回医療経済実態調査 p536,537」
所在地
クリニックを開業するエリアでも、開業医の年収は左右されます。
意外に思われるかもしれませんが、首都圏よりも地方で開業したほうが年収は高くなる傾向にあります。
なぜなら、首都圏には大学病院を含む競合が多くあり、これから新しく開業しても集患が難しいためです。
地方では首都圏ほど競合は多くなく、地域によってはクリニックが不足している場合すらあります。
そのため、地方の開業医のほうが年収が高くなる可能性があるのです。
開業医が年収を上げるためのポイント
開業医になると、勤務医よりも平均年収が上がることがほとんどですが、そのうえでも年収アップを狙いたいものです。
以下の3つのポイントを押さえて、適切に集患ができればさらなる年収アップも見込めるでしょう。
開業医が年収を上げるためのポイント
- 地域のニーズを調査する
- 集患・増患対策を行う
- SNSを活用する
ポイント①地域のニーズを調査する
前述の通り、開業する地域によって開業医の年収は異なります。
とはいえ、ご自身の住む町やゆかりのある土地など、ある程度は開業したい地域が決まっている方も多くいらっしゃることでしょう。
希望している地域で開業したうえで、可能な限り年収を上げるのであれば、開業にあたってその地域のニーズは調査したいところです。
たとえば、いくら一般的に小児科の年収が高いといっても、高齢者の多い地域で開業しては、そもそもの集患が見込めない可能性が大いにあります。
一方で、地域でニーズのある診療科目だとしても競合がすでに多ければ、やはり集患に難航することが考えられます。
その地域でニーズのある診療科目を絞り込んだうえで、競合の数なども考慮し、適切な診療科目を選ぶことが大切です。
地域のニーズに合わせてクリニック開業を行いたい方はこちら
関連記事:クリニックを開業する際の立地はどのように選べばよい?
ポイント②集患・増患対策を行う
開業医が年収をアップさせるならば、来院する患者さんの数を増やしていかなければなりません。
そのためには、Webを活用した集患・増患対策が有効です。
Webで集患・増患を行うなら、クリニックの公式ホームページを作成することはまず前提として必要です。
そのうえで、ホームページを検索エンジンで上位表示させるための“SEO対策”を行うことをおすすめします。
「○○(地域名・最寄り駅の名前) 内科」などの文言で患者さんが検索した際に、ご自身のクリニックが検索結果で上位に表示されれば、ホームページを見てもらえる可能性が高まり、結果的に初診を予約してもらえることも考えられます。
またSEO対策と一緒に、予約システムの導入も検討したいところです。
パソコンやスマートフォンで簡単に予約ができるようになれば、予約や通院のハードルが下がり、集患・増患につながることが期待できます。
ポイント③SNSを活用する
公式SNSを効果的に運用すると、さらなる集患・増患につながり、収入増が見込めます。
近年は公式ホームページだけでなく、SNSから情報収集して通院先を決める患者さんも珍しくありません。
クリニックの情報や、病気の予防方法などの情報を積極的に発信しましょう。
また、季節の話題やクリニックの日常、院長やスタッフの想いなど、公式ホームページよりもカジュアルな話題を投稿できる点も、SNSの特徴の一つです。
患者さんが親しみを感じられる話題を定期的に投稿することで、「このクリニックに通おう」という気持ちを醸成できます。
開業医になるメリット
ここで改めて、勤務医にはない開業医のメリットを確認しましょう。
収入面はもちろん、ほかにもさまざまな面でメリットがあります。
開業医になるメリット
- 高収入を目指せる
- 柔軟な働き方が叶う
- 人選の決定権がある
- 運営方針を自由に決められる
メリット①高収入を目指せる
本記事前半でお伝えしたように、開業医になると勤務医よりも多くの収入を得られる可能性があります。
平均で1.5~1.8倍程度の収入アップ、経営によってはさらなる高収入も見込めます。
集患対策など、経営に関することもご自身で行う必要はあるものの、その点も含めて開業医という生き方の楽しさだと捉えられる方であればメリットに感じられるでしょう。
具体的に、どのような方が開業医に向いているのか? といった点は、本記事でこのあとお伝えしますので、あわせてご覧ください。
メリット②柔軟な働き方が叶う
開業医は、治療のことだけでなく経営のことも考えなければなりませんが、そのぶん働き方をご自身の裁量で決められるというメリットがあります。
診療時間や休診日も自由に決められるため、勤務医よりも自由な働き方がかなうでしょう。
勤務医の場合は、当直や夜間、休日の呼び出しなど、イレギュラーな対応による時間的拘束が大きいという側面があります。
開業医の場合は、そのような対応をしない方針を選ぶこともできるのです。
メリット③人選の決定権がある
開業医は経営者でもあるので、スタッフの採用活動でも決定権をもっています。
「この人となら、よい職場環境を築いて一緒に働けそうだ」と感じられる人材を、自身の判断で採用できるということです。
勤務医時代に人間関係で苦労した経験のある方にとっては、特に大きなメリットとなり得るのではないでしょうか。
質の高い医療を地域社会に提供するには、クリニック内部の人間関係が良好であることが第一です。
その点でも、ご自身の裁量で人選を決められる点はメリットだといえるでしょう。
メリット④運営方針を自由に決められる
開業医になれば、クリニックの運営方針まで自由に決められます。
治療の方針や医療設備などを決めることで、「このような治療を提供したい」「こんなクリニックを作っていきたい」といったご自身の希望がかなうでしょう。
開業医は経営者としての責任が求められるぶん、一人の医師として理想のクリニックを自由に作っていける働き方なのです。
開業医のメリット・デメリットについてもっと詳しく知りたい方はこちら
関連記事:開業医とは?やりがいやメリット・デメリットを詳しく解説!
開業医に向いている方の特徴
最後に、開業医に向いている方の特徴を紹介します。
以下の4つの特徴に当てはまるのなら、開業医となることによる年収アップも夢ではありません。
開業医に向いている方の特徴
- 経営スキルが高い
- 自己管理を徹底している
- コミュニケーションスキルが高い
- 明確な目的がある
特徴①経営スキルが高い
本記事で何度もお伝えしているように、開業医になるには医師としての知識・技術だけでなく、経営者としてクリニックを経営するスキルも求められます。
「経営は未経験だから、自分に経営スキルがあるかどうかはわからない……」と思われる方もいらっしゃるかもしれません。
そのような場合は、たとえば「経費の計算が苦ではないか」「宣伝活動など、治療以外のことにも時間を割くモチベーションはあるか」などの視点で考えてみましょう。
なお、もし「自分は経営に向いていないかもしれない」と思われたとしても、この段階で諦める必要はありません。
以降で紹介する、ほかのポイントに複数当てはまっている方であれば、開業サポートサービスを活用すれば開業医になれる可能性はあります。
特徴②自己管理を徹底している
一人の経営者として責任をもつ意識があり、自己管理を徹底できる方も開業医に向いています。
先ほど、開業医のメリットとして、「裁量があるため自由に経営できる」旨をお伝えしました。
しかし、その自由はご自身の管理のもと、責任をもって経営に向き合うこととトレードオフの関係にあります。
当然ながら、プライベートを優先するあまり休診日が多かったり、自己研鑽を怠っていたがゆえに治療方針が古いものだったりすると、患者さんの足は遠のいてしまうでしょう。
またスタッフを雇用する場合は、経営状況がスタッフの生活と直結するため、「自分のためだけのクリニックではない」という意識を念頭に置いて経営に向き合う必要があります。
その点の自己管理がきちんと行える方であれば、開業医に向いているといえます。
特徴③コミュニケーションスキルが高い
開業医には、コミュニケーションをとる相手が多くいるため、コミュニケーション能力も、開業医に必要なスキルの一つです。
まず必要なのは、対・患者さんのコミュニケーションです。
院長であるご自身の人柄がクリニックの印象に直結するため、患者さんに「いい先生でよかった!」という印象を抱いてもらえるように意識して振舞う必要があります。
また、円滑にクリニックを経営していくためには、看護師や事務員をはじめとするスタッフとのコミュニケーションも欠かせません。
患者さんとスタッフ、それぞれに対し適切なコミュニケーションをとれるスキルが開業医に求められるということです。
特徴④明確な目的がある
開業医に向いている人の特徴として、さまざまなスキルに言及いたしましたが、「そもそもなぜ開業したいのか?」という目的が明確になっていることも大切です。
たとえば、「地域医療に貢献したい」「クリニックを通じて、たくさんの医師を育成し、次の世代につなげたい」など、クリニックの経営を通じて実現できる目的が挙げられます。
「一定期間、勤務医として働いたから」「先輩に勧められたから」といった、なんとなくの理由だけで開業に踏み切るのはおすすめしません。
目的意識がなければ、運営方針がぶれてしまう可能性があります。
開業医を目指している方は、今一度ご自身の目的を振り返ってみましょう。
開業医の平均年収は2,476万円程度。工夫次第で年収アップも可能
今回は、開業医と勤務医の平均年収をご紹介しました。
開業医の平均年収は2,476万円程度で、手取り額で計算すると1,600万円前後だとされています。
これは勤務医の1.5~1.8倍程度の額となりますが、あくまでも平均値であるため、診療科目や地域、経営の手腕によってはさらなる年収アップも可能です。
なお、開業を目指している方は、マツキヨココカラの提供するクリニック開業サポートをぜひご検討ください。
“開業”をゴールとせず、開業後の集患や経営も含めて、専門チームが支援いたします。