クリニックを開業するにあたり、節税対策や将来的な事業承継を視野に入れて、医療法人化を検討している方もいらっしゃるかもしれません。
医療法人の形態として“医療法人社団”が選ばれるのが一般的ですが、これにはメリットやデメリットが存在します。
本記事で紹介する医療法人化の効果を正しく理解し、クリニックの最適な経営にお役立てください。
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医療法人とは
医療法人とは、クリニックや介護施設の運営を目的として設立される非営利法人のことです。
個人事業主や一般的な企業と異なり利益を追求しないため、公益性の高い組織であるといえます。
ここでは、医療法人の制度上の特徴を整理し、個人事業主との違いを確認していきましょう。
個人事業主と医療法人の違い
| 個人事業主 | 医療法人 | |
|---|---|---|
| 開設方法 | 各種届出のみ | 都道府県知事の許可が必要 |
| 開設数 | 1か所のみ | 分院の開設が可能 |
| 施設の種類 | クリニック | クリニック・介護施設など |
| 登記 | 不要 | 必要 |
| 決算日 | 12月31日 | 自由に設定が可能 |
| 決算書の提出 | 不要(青色申告者の場合は必要) | 必要 |
| 役員報酬 | なし(医業利益が医師の収入となる) | あり(一定のルールのもとで金額の設定が可能) |
| 退職金制度 | なし | あり |
| 社会保険 | 加入義務なし(従業員が5人以下の場合) | 加入義務あり |
| 立入検査 | なし | あり |
個人事業主としてクリニックを経営する場合、医師個人の収入は売上から各種経費を差し引いた金額となり、自由に使えるのが特徴です。
一方、医療法人の場合、クリニックの収入はすべて法人のものとして扱われます。
医師は給与として報酬を受け取るかたちとなり、売上金のすべてを自由に使うことはできません。
これは、個人事業主の医師が法的に営利性を持つ事業者として扱われるのに対し、医療法人は非営利法人として地域社会への貢献が求められているためです。
ただし、医療法人は公益性の高い事業として、税制上の優遇が受けられるメリットもあります。
医療法人社団と医療法人財団の違い
医療法人は、“医療法人社団”と“医療法人財団”の2つの形態に分類され、それぞれ設立の条件や運営方法が異なります。
具体的な特徴を、以下で詳しく見ていきましょう。
医療法人社団の特徴
医療法人社団は、医師や医療従事者といった複数の構成員が共同で医療サービスや介護サービスを提供するために設立される法人です。
営利を目的とせず、事業で得られた利益はすべて提供する医療や介護の質の向上、また設備投資に充てられます。
医療法人社団は組織的に運営できる仕組みが整っており、診療科の拡大や分院の開設など、将来的な事業展開も可能です。
また、日本にある医療法人の99.4%が医療法人社団となっており、設立のハードルが低いことも特徴として挙げられます。
医療法人社団のメリットやデメリットを、以下でさらに詳しく解説していきます。
参照元:厚生労働省「医療法人数の推移(令和7年10月現在)」
医療法人社団のメリット
医療法人社団の最大のメリットは、クリニックの運営がしやすいことです。
非営利団体でありながらも、一般的な株式会社と同じように、法人の強みを生かして安定的な経営が見込めます。
たとえば、医療法人化するには都道府県知事の許可が必要になるため、社会的な信用が高まり、金融機関からの融資が受けやすくなります。
また、院長(理事長)が引退、あるいは死亡した場合でも、法人を解散せずに交代の手続きのみで事業の引き継ぎが可能です。
さらに設立事例が豊富なので、参考となる情報が集めやすいといったメリットもあります。
医療法人社団のデメリット
医療法人社団のデメリットは、財務上のリスクがあることです。
2025年現在、医療法人社団を設立するための資金を集める方法は、主に基金拠出型と寄付行為型に分けられます。
基金拠出型は、設立者や社員から基金の拠出を受ける方法で、これは法律上の負債として拠出者への返還義務が生じます。
対して、寄付行為型は財産を無償で法人に寄付してもらう方法です。
しかし、この方法は出資者が財産を完全に手放すことになるので、資金の返還がある基金拠出型が採用される傾向にあります。
そのため、拠出者への将来的な資金の返還を想定した運営が必要になります。
また、小規模なクリニックでは、法人と院長(理事長)の資産が混同しやすく、会計上の問題が起きるリスクがある点もデメリットです。
医療法人財団の特徴
医療法人社団が医師や医療従事者などの社員が集まって設立されるのに対し、医療法人財団は設立者が無償で財産を寄付することで設立される法人を指します。
つまり、法人の基盤が“人”ではなく“財産”であるのが特徴です。
寄付された現金や不動産、医療機器といった財産は、設立者に返還または分配されることはありません。
設立者がまとまった財産を提供する必要があるため、設立のハードルは医療法人社団に比べて格段に高くなります。
なお、厚生労働省の統計によると、医療法人の総数のうち医療法人財団は1%未満にとどまっていることがわかります。
参照元:厚生労働省「医療法人数の推移(令和7年10月現在)」
医療法人財団のメリット
医療法人財団のメリットとして、資金が流出するリスクが少ない点や、社会的な信用を得やすい点が挙げられます。
医療法人財団は、設立時に寄付された財産を基盤として運営されます。
寄付された財産は出資者への返還義務がなく、払い戻しによる資金減少の心配がありません。
これにより、長期にわたって安定した経営が可能になるというわけです。
また、寄付財産による設立であり出資者への財産の分配がないことは、公益性の高さの証明になります。
利益よりも地域社会への貢献を優先する姿勢が強調されるので、社会的な信頼度が高まり、クリニックや介護施設の利用者に好印象を与えられるでしょう。
このような法人は、融資を受ける金融機関からの評価も上がりやすいため、資金調達の面でも有利にはたらきます。
医療法人財団のデメリット
安定した経営や社会的な信用が得られるとはいえ、医療法人財団を設立するには多額の寄付金が必要です。
設立時の費用は地域や事業規模によって異なりますが、法人登記や設備の導入、数か月分の運転資金などで億単位になることもあります。
くわえて、親族から寄付を受けた場合は贈与税の課税対象となる可能性があり、設立のハードルはさらに高くなります。
また、医療法人財団は、経営の自由度が低い点もデメリットの一つです。
医療法人財団では、理事会のほかに財産の管理や運営を監督する評議員会の設置が義務づけられています。
評議員会は理事の選任や予算、事業計画などを承認する権限を持っているため、医療法人社団と比べて設立者の意向による自由な運営は難しいでしょう。
ご自身が考える事業目的や規模に応じて、医療法人社団と医療法人財団のどちらが適しているかを見極めることが重要です。
医療法人の類型
医療法人には、クリニックや介護施設が安定的かつ適正に運営されるよう、組織の構成や運営方法によっていくつかの類型が設けられています。
主な類型は、以下の通りです。
医療法人の類型
- 社会医療法人
- 特定医療法人
- 持分なし医療法人
- 基金拠出型医療法人
社会医療法人
社会医療法人は、地域医療を安定的に支えることを目的として設けられた法人形態の一つです。
具体的には、救急医療や災害医療、へき地医療といった公益性の高い医療サービスを提供します。
なお、社会医療法人の認可を受けるためには、役員となる親族の人数や報酬額に対する要件を満たす必要があります。
公益性の高いサービスの提供が義務づけられており、日々の運営には責任が伴う点を十分に理解しておきましょう。
特定医療法人
特定医療法人とは、健全で透明性の高い経営体制の維持を条件に、税制上の優遇措置を受けられる法人形態のことです。
特定医療法人には、税金の負担を軽減する代わりに地域医療への継続的な貢献が求められます。
また、特定医療法人の認可には「社員である親族に利益を与えない」「社会保険診療の収入金額が全収入の8割を超える」といった要件が課されます。
これらを含むすべての要件を満たすことで、特定医療法人として認可され、法人税率が通常の23.2%から19%に特例的に軽減されるのです。
税金の負担を軽減できれば、設備投資や人材の確保に資金を回しやすくなり、質の高いサービスの提供や安定した経営の維持が可能になります。
持分なし医療法人
持分なし医療法人とは、従来の持分あり医療法人に存在した出資者の持分(財産権)を廃止し、より公益性を重視した法人形態のことを指します。
出資者に対する財産の払い戻しや分配による資金の流出がないため、安定した経営基盤を築けるのが特徴です。
なお、平成18年に行われた医療法改正により、新たに設立する医療法人は持分なし医療法人のみ認められています。
参照元:厚生労働省「医療法改正の概要(平成18年公布、平成19年施工)p20」
基金拠出型医療法人
基金拠出型医療法人は、持分なし医療法人の一種で、設立時の資金を“基金”として拠出してもらう仕組みの法人形態です。
この基金に財産権は発生しないため、拠出者に利益や残余財産を分配する義務がなく、高い公益性と財務の安定性が確保されます。
さらに、基金は出資金と異なり、相続税や贈与税の対象とはならず、節税の効果も期待できます。
ただし、拠出された基金は必要な要件を満たす場合、拠出者に返還しなければなりません。
具体的には、利益が十分に蓄積されていることや、法人の設立時に定めた“基金を返還しない期間”を超えることなどが挙げられます。
そのため、将来的な基金の返還に配慮した計画的な運営が必要になります。
医療法人化の実態
厚生労働省が2024年に実施した調査によると、クリニックにおける医療法人の割合は全体の45.3%を占めており、個人経営の36.8%を上回っています。
多くの医師が、事業の拡大や従業員の雇用を安定的に行ううえで「個人経営のクリニックでは限界がある」と感じているのかもしれません。
特に、将来的な事業承継や分院を見据えて開業する医師にとっては、節税対策や資金調達の面でも医療法人の設立は最適な選択肢となるでしょう。
しかし、法人化には社会保険の加入義務や会計処理の頻雑さといった負担が生じる側面もあります。
医療法人化は、事業の拡大や安定した経営を目指すための手段として捉え、慎重に進めることが大切です。
参照元:厚生労働省「令和6(2024)年医療施設(動態)調査・病院報告の概況p7」
医療法人化のメリット
医療法人化することには、個人経営のクリニックでは得られない多くのメリットがあります。
ここからは、医療法人化のメリットを詳しく見ていきましょう。
医療法人化のメリット
- メリット①節税効果がある
- メリット②社会的な信用を得られる
- メリット③事業を拡大できる
- メリット④事業承継の手続きが簡素化する
- メリット⑤人材を確保しやすくなる
メリット①節税効果がある
一定以上の利益が出ているクリニックでは、個人で経営するよりも医療法人を設立したほうが税金の負担を抑えられる可能性があります。
個人経営の場合、経費を差し引いたあとのクリニックの利益はすべて院長個人の所得になるため、利益が多いほど所得税は高くなるのが一般的です。
しかし、医療法人化して院長(理事長)に役員報酬として給与を支払えば、経費で計上できる金額が増えます。
その結果、クリニック全体の利益が減り、法人税の負担が軽くなるというわけです。
また、生命保険への加入や退職金の積立なども節税対策として有効です。
これらは支払った保険料の一部を経費として扱えるので、さらにクリニック全体の利益額の削減につながります。
このように、法人化することで将来的な資産形成も可能になります。
メリット②社会的な信用を得られる
医療法人化することで、対外的に経営の安定性や継続性が評価され、社会的な信用が高まります。
これは、法人が厳格な会計処理や情報の開示を行うよう、法律によって義務づけられているためです。
こうした信用力の向上は、特に金融機関との関係において強みとなり、設備投資や増患対策のための融資を受けやすくなります。
融資によって高度な医療機器の導入や施設内の設備を充実させることができれば、質の高いサービスの提供が可能になり、患者さんの満足度も上がるはずです。
その結果、さらに社会的な評価は向上するため、安定した経営を続けていくうえでも医療法人化のメリットは大きいといえます。
メリット③事業を拡大できる
複数の診療科を展開したり、関連施設を設置したりできる点も、医療法人化のメリットとして挙げられます。
個人事業主としてクリニックを経営する場合、分院を持つことが認められていません。
しかし、法人化すれば複数の施設を展開することが可能になります。
そのため、将来的に事業の拡大を目指す医師にとって、医療法人化は最適な選択肢といえるでしょう。
メリット④事業承継の手続きが簡素化する
医療法人化には、クリニックの事業承継を円滑に行えるメリットもあります。
個人経営のクリニックでは、後継者がいない場合、院長の引退や死亡によって廃業を選択せざるを得ないこともあるでしょう。
もしくは、第三者に事業の売却や譲渡を検討する必要があり、承継先の選定や複雑な手続きに頭を抱える医師も少なくありません。
一方、医療法人の場合は、院長(理事長)の交代手続きのみで事業を引き継ぐことが可能です。
また、法人として締結した契約や、蓄積された財産をそのまま引き継げるので、後継者に負担をかけずに事業を承継できます。
こうした仕組みにより、長期にわたって地域社会に貢献できる体制を維持しやすいのは、医療法人の大きな強みとなります。
メリット⑤人材を確保しやすくなる
医療法人化によって、人材が確保しやすくなるのも大きなメリットです。
個人経営のクリニックでは、従業員が5人以下の場合、社会保険への加入義務はありません。
対して、法人は従業員数にかかわらず社会保険への加入が必須となるため、福利厚生が充実することで求職者を集めやすくなります。
さらに、法人化によって事業を拡大していく場合は、従業員がキャリアアップできる職場としてアピールできます。
たとえば、管理職へのステップアップや新規事業の立ち上げなど、多様なキャリアパスを提供できるでしょう。
こうした安定性と成長性を兼ね備えた組織の仕組みは、優秀な人材の確保につながり、結果としてクリニック全体のサービスの向上にも結びつきます。
医療法人化のデメリット
医療法人化には多くのメリットがある一方、以下のようなデメリットも存在します。
医療法人化のデメリット
- デメリット①運営管理が複雑になる
- デメリット②運営にコストがかかる
- デメリット③借入金を引き継げなくなる
- デメリット④業務内容に制約が生じる
- デメリット⑤解散の手続きに手間がかかる
デメリット①運営管理が複雑になる
法人化すると、会計処理や決算、理事会の運営、各種届出など、運営管理が複雑になります。
これは、医療法人が医療法や税制上の規定に従い、厳格な管理を行う必要があるためです。
さらに、組織の規模が大きくなるほど、これらの業務負担は増えることが予想されます。
院長(理事長)は通常の診療だけでなく、医療法人特有の業務にも対応しなければならず、大きな負担がかかります。
そのため、必要に応じて税理士や社会保険労務士といった、外部の専門家との連携を検討しておくとよいでしょう。
デメリット②運営にコストがかかる
医療法人化によって、社会保険や人件費などのコストが大きくなる点もデメリットです。
法人では、従業員の人数にかかわらず社会保険への加入が義務づけられているため、小規模な個人経営のクリニックよりも保険料の負担が大きくなります。
また、事業の拡大に伴い新しい人材を確保する必要があるので、こうした人的コストの負担も避けられません。
ただし、従業員の処遇や福利厚生を充実させることは、採用面でプラスにはたらきます。
多くの求職者を集められる可能性が高いので、そのなかで即戦力となる人材を絞り、少数精鋭で運営するといった工夫がコスト削減のポイントです。
デメリット③借入金を引き継げなくなる
個人経営のクリニックから法人化する場合、院長個人の借入金を法人にそのまま引き継ぐことはできません。
医療法人は、税制上個人とはまったく別の主体として扱われ、個人の債務を移転できない仕組みになっています。
そのため、個人名義での借入金は、引き続き院長が返済していく必要があります。
なお、借入金で購入した不動産や医療機器、OA機器などは現物出資として法人に引き継ぎが可能です。
開業時には、将来的な事業の拡大や承継などを念頭に置いたうえで、最適な経営形態を選びましょう。
デメリット④業務内容に制約が生じる
医療法人は、法律によって業務の範囲が明確に制限されているため、活動の自由度が個人経営のクリニックよりも狭くなります。
医療法人の経営は、法律上“医療や介護に関する事業”に限定されており、収益性の高いビジネスや医療・介護に関係のない事業は展開できません。
また、新たな事業を行う際には、所轄の自治体に届け出て認可を受ける必要があります。
こうした制約により、柔軟な経営戦略を立てるのが難しい点は、法人化のデメリットの一つといえます。
参照元:厚生労働省「医療法人の業務範囲」
デメリット⑤解散の手続きに手間がかかる
医療法人の解散には多くの手続きが必要となり、個人経営のクリニックを廃業するよりもはるかに手間がかかります。
具体的には、医療法に基づき理事会や社員総会の議決を経て、都道府県知事への申請、清算人の選定など、複数の手続きが必要になります。
また、医療施設の廃止届や従業員の退職手続き、残余財産の帰属先の決定など、関係機関とも調整しなければなりません。
これらの対応がすべて終わり、法人の清算結了までには最低でも3~6か月程度かかることが見込まれます。
医療法人化に適しているケース
すべてのクリニックに医療法人化のメリットがあるわけではないため、目的やコンセプトに合わせて慎重に法人化を検討する必要があります。
特に法人化に適しているのは、以下のようなケースです。
税金を抑えたい場合
少しでも税金の負担を減らしたい場合は、個人経営よりも医療法人化が適しています。
個人事業主の場合、院長個人の所得税は累進課税が適用されるので、クリニックの収入が増えるほど税金の負担は大きくなります。
一方、医療法人の場合は法人税率が適用されるため、院長(理事長)には役員報酬というかたちで給与を支払い、経費として計上することが可能です。
役員報酬の金額を、法人税と個人の所得税の合計がもっとも低くなるように調整すれば、税金の負担を減らせます。
また、退職金制度の導入によって、積立金を経費として計上することもできます。
このように、長期的な視点で税金の負担を軽減したい場合には、医療法人化が最適です。
事業拡大やクリニックの承継を考えている場合
将来的に事業の拡大やクリニックの承継を目指す場合も、医療法人化が有効な選択肢となります。
法人化することで、組織としての信用度を高めるだけでなく資金調達もしやすくなるので、大規模な投資や新規事業を展開するのに適しています。
また、院長(理事長)の交代というかたちで、比較的簡単に事業を引き継げるのも利点です。
そのため、クリニックの後継者があらかじめ決まっているのであれば、法人化によって手続きを円滑に進められるでしょう。
クリニックの長期的な成長戦略や後継者問題を意識している場合には、医療法人化が望ましいといえます。
個人での経営が向いているケース
事業を拡大せずに、診療に専念しながらクリニックを柔軟に運営したい場合には、個人経営が向いています。
そのほか次のようなケースでも、個人での経営が推奨されます。
複雑な手続きに負担を感じる場合
医療法人化に伴う手続きに負担を感じる方は、個人での経営をおすすめします。
法人化には、定款の作成や各種許可申請、法人としての会計処理、社会保険への加入など、複雑な手続きが必要です。
これらの手続きに大きな負担を感じる場合や、適切な管理体制が整備できない場合は、個人で経営するほうが失敗のリスクを減らせます。
また、個人経営であれば法人特有の制約がなくクリニックを自由に運営できるため、理想の医療を追求したい方にも向いています。
クリニックの後継者がいない場合
将来的にクリニックを引き継ぐ後継者がいない場合、法人化するメリットは少ないでしょう。
医療法人は解散の手続きが頻雑で、残余財産の扱いにも制約がかかるため、後継者がいない状態で法人化するとかえって整理の負担が大きくなる可能性があります。
その点、個人事業主であれば廃業の手続きが比較的シンプルであり、出口戦略の選択肢も豊富です。
たとえば、有利な条件で事業を売却・譲渡するなど、状況に応じて柔軟に対応できます。
このように引退時の選択肢を広げる意味でも、開業時にクリニックを承継する見通しが立たない場合は、個人経営が適しています。
医療法人化の要件
医療法人を設立するには、いくつかの要件を満たす必要があります。
代表的な要件は、以下をご確認ください。
医療法人化の要件の例
- 医師または歯科医師である(欠格条項に該当していない)
- 継続的に医療の提供が可能な運営体制である
- 3名以上の理事・1名以上の監事を設置できる
- 定款をはじめ設立に必要な書類を整備できる
- 営利目的で運営しない(剰余金の分配は禁止)
- 事業報告書の提出や理事会の開催など法に基づく管理が可能である
- 基金(資金)の拠出が可能である
- 会計・労務などの事務体制を整備できる
- 都道府県知事から認可を受けられる
医療法人は営利を目的としないため、剰余金の分配が禁止されるといった厳しいルールが設けられています。
これらの要件を満たし、継続的に運営していけるかどうかが、法人化の重要なポイントとなります。
参照元:e-Gov法令検索「医療法(昭和二十三年法律第二百五号第三十九条~第四十六条)」
医療法人化にかかる費用
医療法人を設立する際は、クリニックの開業費用とは別に、法人の登記や関係機関への申請手続きに費用がかかります。
主な費用の内訳と目安は、以下の通りです。
医療法人化にかかる費用の目安
| 内訳 | 費用 |
|---|---|
| 医療法人設立認可申請 | 60万~100万円 |
| 医療法人の登記完了届出 | 10万~15万円 |
| 保健所への開設手続き | 20万~25万円 |
| 厚生局への保険医療機関指定申請 | 6万~10万円 |
| 役員の変更届 | 5万円程度 |
| 事業報告書等の提出 | 5万円程度 |
| 各種手続きにかかる印紙代や交通費など | 実費 |
これらはあくまでも目安であり、医療法人化に伴う実際の費用は所轄の自治体によって異なります。
また、ご自身ですべての手続きを行うのは難しいため、クリニック開業サポートや行政書士などの専門家に依頼するのが一般的です。
専門家への報酬を含め、必要な費用をあらかじめ把握しておけば、法人化の手続きを円滑に進められるでしょう。
医療法人化の流れ
医療法人を設立するにはさまざまな手続きが必要ですが、どのような流れで進めればよいのでしょうか。
具体的な法人化の流れは、以下を参考にしてください。
医療法人化の流れ
- 専門家への相談・事前準備
- 医療法人設立説明会に参加
- 定款・必要書類の作成
- 設立総会の開催
- 所轄の自治体への認可申請・審査
- 設立認可の取得
- 法人の設立登記
医療法人化の各種申請や手続きには、各自治体によって詳細な要件や提出期限が定められています。
そのため、スムーズに認可を受けるために、不備のないよう事前準備を進めましょう。
法人化の手続きを円滑に進めるには、早い段階から設立の流れを把握しておき、状況に応じて専門家のサポートを受けながら進めることが大切です。
医療法人社団のメリットとして融資が受けやすくなるものの、業務の負担が増える点はデメリットとなる
医療法人社団を設立する主なメリットは、税金の負担を軽減できるほか、社会的な信用が高まることで融資が受けやすくなる点にあります。
一方、医療法人の設立や経営にあたっては、各種届出や理事会の運営など、個人経営と比べて診療以外の業務の負担が大きくなります。
必要に応じて外部の専門家にサポートを依頼し、負担を減らしながら手続きや運営を行うことが重要です。
クリニックを新規開業、もしくは分院を検討されている方は、マツキヨココカラの提供するクリニック開業サポートをぜひご活用ください。
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